イトーヨーカ堂「ヨーク・デリ」誕生から1年 25年度に掲げる3つの重点戦略とは
イトーヨーカ堂(東京都/山本哲也社長)は5月22日、自社の総菜ブランド「YORK DELI(ヨーク・デリ)」の誕生1周年を記念して会見を開いた。「毎日食べたいおいしさ」をコンセプトに、おかずや副菜など多様なメニューを展開するヨークデリ。立ち上げ以降、新商品を次々投入し、総菜売上高は対前年同期比5%増、自社工場「ピースデリ」製商品の構成比は18%にまで成長した。25年度は「二極化への対応」「簡便・即食ニーズへの対応」「新たな価値の提案」の3つの戦略を掲げる。商品数を前年比2倍の90品目に拡大し、総菜の売上高構成比15%達成をめざす考えだ。
生き残りをかけて総菜の強化を図る
ヨーク・デリは、「『毎日食べたい』おいしさ」をコンセプトとするイトーヨーカ堂の総菜ブランドだ。ヨーク・デリでは、「イトーヨーカ堂、ヨークでしか買えない商品」「旬の食材、旬のメニュー」「添加物を減らし家庭の調理に近づける」「自社工場のインフラ、原料の活用」をテーマに、おかずや副菜など多様なメニューを展開する。商品は店内厨房のほか、自社工場「Peace Deli(ピースデリ)千葉キッチン」(千葉県千葉市)などで製造している。
ヨーク・デリは、イトーヨーカ堂親会社のセブン&アイ・ホールディングス(東京都/井阪隆一社長:以下セブン&アイ)の「食」を中心とする改革の一環で誕生した。
セブン&アイは23年3月、21年を初年度とする5カ年の中期経営計画をアップデートした。その中で、食品スーパーや総合スーパー(GMS)からなる首都圏のスーパーストア(SST)事業の”抜本的な改革”を掲げ、総菜を成長戦略の柱に位置付けた。
その後、同年9月にSST事業会社のシナジーの最大化を目的としてイトーヨーカ堂とヨークと経営統合した。24年2月には、セブン&アイグループ初の共通セントラルキッチン「ピースデリ千葉キッチン」の稼働を開始させる。プロセスセンターの機能を併せ持つ同施設の稼働により、店舗業務の効率化が進み、新商品の開発体制が強化された。
この流れを受けて、イトーヨーカ堂は総菜で競合との「圧倒的な差別化」をめざして24年5月にヨーク・デリを立ち上げた。
同社が総菜を強化する背景にあるのは、消費環境の変化だ。総務省の調査によれば、00年以降、単身世帯や共働き世帯が増加。家庭での調理量・時間が減少傾向にあるなかで、タイパ・コスパ志向が強まり、中食需要が拡大している。「惣菜白書2024年版」によると、総菜市場は年々拡大を続け、24年度に初めて11兆円を突破した。

イトーヨーカ堂執行役員でフード&ドラッグ事業部長を務める西山英樹氏は、ヨーク・デリ1周年を記念する会見の場で「総菜を通じてお客さまに近づいていくことは使命であり、これは今後の生き残りをかけた戦いだ」と力を込めた。
独自商品の拡充とともに売上高も着実に伸長
ブランド立ち上げ後は新商品を次々に導入した。24年度中はピースデリ商品43品目を投入し、商品の構成比は総菜全体の約18%を占めるまでに成長。これにより、25年3~5月の総菜の既存店売上高は前年同期から5%増加した。
商品分類ごとに既存店売上高の推移を見ると、24年度とくに強化した「麺類・軽食」は対前年同期比14%増となった。24年度は「ご当地の味!ひもかわうどん」などの冷たい麺で新商品を導入。また、ナポリタンスパゲティやミートソーススパゲティはピースデリ千葉キッチンで内製化することで、各399円(以下税別)という値ごろ感のある価格にした。

同106%増加と大きく伸びたのが「玉子焼き」。店内で一つずつ焼き上げた出汁巻き玉子が好調で、唐揚げとセットにした商品がとくに人気を集めた。

そのほか「中華料理」は同16%、「煮物」は同15%それぞれ増加した。
また、25年3月にはPeace Deli(千葉県/伊藤弘雅社長)を完全子会社化した。これにより、自社開発・製造・販売の体制を確立し、インフラ・原料の活用を強化する。