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イオンモール、中国・武漢の 先行事例を取り入れた最新のコロナウイルス感染防止対策

イオンモール(千葉県/岩村康次社長)は5月28日、政府からの緊急事態宣言が解除されたことに伴い、東京、神奈川、埼玉、千葉の首都圏にある同社ショッピングセンターを、営業時間を短縮させて再開した。

同社は同日、千葉県千葉市にある同社旗艦店「イオンモール幕張新都心」(以下、幕張新都心店)で実践する、感染拡大を防ぐための対策をメディア向けに公開した。新型コロナウイルス感染症の脅威が存在するなか、経済活動を持続させていくことが求められている今、小売業が店頭で行う感染防止対策の最新事例として、同店の代表的な取り組みを紹介しよう。

5月28日から営業を再開した「イオンモール幕張新都心」

AI搭載の体温測定器を出入口に設置

 モール内での感染拡大を防ぐには、可能な限りウイルスや発熱者が館内に入らないようにすることが重要となる。そこで、幕張新都心店の計8カ所の出入口では、手指消毒液と非接触型の体温測定器を設置している。

 体温測定器には、ソフトバンク子会社の日本コンピュータビジョン(東京都)が提供する、AI検温ソリューション「センス・サンダー(Sense Thunder)」を採用している。同ソリューションは、赤外線カメラにより1.2m圏内に近づいた対象者の体温を、0.5秒という短時間で測定可能。37.5度以上を検知するとモニターが赤く光り、発熱している可能性があることを対象者に知らせる。AIによる顔認証技術も搭載されているが、イオンモールでは現段階では使用せず、個人の画像データの取得は行わないという。

 幕張新都心店では、同測定器を従業員の勤務スペースも含めて全40台設置し、発熱している従業者の勤務は禁止し、来場者には入館を遠慮してもらえるように呼び掛けるという。

「センス・サンダー」を採用した体温測定器では、マスクや眼鏡を着用した状態でも検温可能だ

混雑度90%超えで入場制限をかける

 新型コロナウイルスは感染力が高いため、密閉・密集・密接した環境をつくらないことも求められている。

 そこでモール中央のインフォメーションカウンターに設置しているのが、混雑度状況の案内パネルだ。厚生労働省の指針に基づき、入場者数、モールの共用部と店舗面積、換気量から、密集と密閉指標を、さらにそこから混雑度合いを算出し%で表示する。

 混雑度合いが80%を超えた場合は、館内アナウンスでソーシャルディスタンスの確保を呼びかけ、90%を超えた場合は入場制限を行うという。

インフォメーションカウンターには混雑度状況の案内パネルを設置(写真右側)。90%を超えた場合は入場制限を行う
換気を促進するために、出入口はすべて開放した状態を保つほか、幕張新都心店では全8台のサーキュレーターも稼働させている

フードコートは席数を半減、間隔を空ける 

 来場者のソーシャル・ディスタンスを確保するための工夫も多く見られる。

 たとえば、多くの人が集まるフードコートでは、席数を従来の1500席から750席に半減させて、隣の利用者との距離を保てるようにしている。

 また、モール内の共用部にある休憩スペースでは、ポスターを貼ることで、1席ずつ間隔を空けて利用してもらえるようにしている。

フードコートでは、席数を半減させて、隣の利用者との距離を保てるようにしている
共用部にある休憩スペースでは、ポスターを貼ることで1席ずつ間隔を空けての利用を促す

エレベーターの利用は1機に4人まで

 大型モールに多く設置されているエレベーターでは、床面に立ち位置の目印をつけて、間隔を確保するために4人ずつの利用を促す。

 エスカレーターでは、手すり下の部分に表示を付けることで、間隔を空けて利用してもらえるようにしている。

エレベーターの床面には立ち位置のほか、人との間隔を保つためにテープで仕切りをつけている
エスカレーターでは、手すり下の部分に表示を付ける

買物カゴは毎回従業員が消毒

 イオンリテール(千葉県/井出武美社長)が運営する食品売場については、レジや対面カウンターでは、アクリル板やビニールシートを設置。売場に立つ従業員はマスクのほか、フェイスガードも着用して飛沫感染を予防する。

 とくに混雑が懸念されるレジ回りでは、レジ待ちの際や、サッカー台でも人との間隔を保てるように床や台に、目印や案内表示をつけている。

 加えて買物カゴは利用の都度、担当者が持ち手の部分を消毒し、POPで消毒済のカゴであることを案内する。

サッカー台にも飛沫感染防止のためのアクリル板を設置している
店頭に立つ従業員はマスクのほか、フェイスガードも着用する
利用された買物カゴは、担当者が持ち手の部分を消毒し、消毒済みのものを利用してもらえるようにしている

 そのほか今後の施策として、イオンモールは6月以降に公式アプリを大幅にリニューアルする。

 その際、新たな機能として、来場者が目的の売場までのルートをアプリ上で確認できるようにして人の移動距離を減らせるようにする計画だ。将来的には前述したモール内の混雑度合いをアプリ上で確認できる機能も搭載していきたい考えだ。

感染リスクのなかでも営業活動が当たり前になる

 このようにさまざまな感染防止対策を講じているイオンモール。これらの対策を考えるに当たっては、日本に先行してコロナ禍下での営業活動を経験している中国・武漢市にあるイオングループ商業施設の事例も参考にしたという。

 同社マーケティング統括部マーケティング部マーケティング/プロモーショングループマネージャーの竹田忍氏は「感染症のリスクがあるなかで営業活動を行うことが今後は当たり前になってくるだろう。そうしたなかより空間になじむデザインでの表示や施設設計での感染防止対策の在り方を追求していきたい」と話している。