アフターコロナ時代のBCPその1 “従来“との危機対応の違い
今必要なのは未来予測!
新型コロナウイルス感染症との闘いが長期化する可能性が濃厚となりつつあるなか、今後の事業継続・拡大について頭を抱えている経営者は多いのではないだろうか。
そんな暗中模索、先が見通しづらい中で求められているのは、未来を予測することではないだろうか。コロナの影響下で消費者の行動が変化することにより、求められるサービスや付加価値は日本全体で大きく変わると推測される。この消費行動と価値観の変化を予測、先取りし、既存のビジネスを再構築できる小売業者がアフターコロナでの継続的発展を可能にするだろう。
本連載では筆者が所属するNTTデータグループのコンサルティング会社クニエ(東京都/高木真也社長)の小売・流通インダストリーチームのメンバーとともに考察した、ウィズ(With)コロナ、アフターコロナでの小売業界の未来予測を全3回に分けて共有したいと思う。業界の発展の一助になれば幸いである。
コロナ対応は
従来の危機対応とは
大きく異なる!
第1回の今回は、①従来のBCP(事業継続化計画)による危機対応と、コロナにおける危機対応は大きく異なること。②コロナ対応の鍵となる、消費者の求める価値と行動の変化ついての2つについて述べたい。
まず①については、従来のBCPの想定は過去の危機を参考に計画されており、特定の地域での災害や震災により商品、材料、設備が損壊することで、一部の地域への商品供給が出来ない状況、またはシステムトラブル等で一部システムが一時停止すること等が想定されているものが多い。
その対応としては、地域間で損なわれた機能を補完し、影響を受けた事業の一時復旧を図りつつ、いかに早く損壊した機器やインフラを元の姿に復旧させるかがポイントであった。言い換えれば、短期での事業正常化計画である。
では、コロナ危機ではどうか。「地域」の観点では、全地域で同時期に発生するため他の地域からの支援は限定的だ。「期間」の観点では、1~3年という長期間継続すると想定され、元に戻す“復旧”という考えは通用しない。いかに損失を抑えつつビジネスを継続させていくかという“共存化”が必要となるのだ。
コロナ対応のBCPとは
新たな事業戦略の構築である
さらに、最も重要な点は、今までのBCPでは危機が去ったあと顧客の消費行動と価値観が変わらないことが大前提であった。しかしコロナ危機の影響は、人と人との接触が発生する全ての企業活動と消費活動という広範囲、かつ長期間に影響を与えるため、アフター・コロナでの消費行動変化への対応が必要となることである。
小売業におけるコロナ危機対応の本質とは、今後起こりうるウィズ・コロナ、アフター・コロナでの消費者の行動変化への対応であり、つまりはBCP(事業継続化計画)の枠を超えた事業戦略そのものなのだ。