ソフトバンクG、15年ぶり赤字 孫会長「潮目悪いが悲観せず」

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会見する孫正義会長
ソフトバンクグループ(SBG)が18日に発表した2020年3月期の連結純損益(国際会計基準)は9615億円の赤字だった。前期の1兆4111億円の黒字から2.4兆円悪化した。写真は2018年11月、会見する孫正義会長(2020年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

[東京 18日 ロイター] – ソフトバンクグループ(SBG)が18日に発表した2020年3月期の連結純損益(国際会計基準)は9615億円の赤字だった。前期の1兆4111億円の黒字から2.4兆円悪化した。投資先企業の評価引き下げで損失が膨らんだ。赤字は15年ぶりで、赤字額は過去最大。

孫正義会長兼社長はオンライン会見で、足元の事業環境について「前回(の決算会見で)、うかつにも潮目がいい方向に変わったと楽観的なことを言ったが、もう一度、潮目が変わって悪い方向に行っている」との受け止めを述べた。用心深く事業を運営していく考えを示しながら、同社がITバブルの崩壊やリーマン・ショック時に経験したリスクに比べると「まだまだ軽い方ではないか」との見方で「そこまで悲観していない」とも述べた。

孫氏が重視する「株主価値」は、昨年12月末の23兆円が5月18日時点で21.6兆円に減った。保有株の価値が5000億円減った一方、自社株買いや新たな投資、資金調達コストなどで純有利子負債が8000億円増えたことが背景にある。

孫氏は「減ったことは事実として重く受け止める」としたが、この間に株式市場が大きく下げたことや、世界恐慌の際の株価暴落、ITバブル崩壊直後の同社株価の大幅下落に触れ「真っ逆さまのどん底に比べると、減ったと言っても大ショックを受けるほどではない」とした。

営業損失は1兆3646億円だった(前期は2兆0736億円の黒字)。新興企業などに投資するビジョン・ファンドが期末に保有する投資の未実現評価損失は1.9兆円となった。米ライドシェア大手のウーバーや、米シェアオフィス大手のウィー・ワークなどの公正価値が減少したほか、新型コロナウイルスの感染拡大の影響でその他の投資先の公正価値の合計も1―3月期に大幅に減少した。

純損益は、関連会社の中国電子商取引大手アリババの香港上場時の新株発行などに伴う持分変動利益3398億円や、アリババ株式先渡売買契約決済益の利益影響額8568億円、持分法による投資利益6387億円などがあったが、財務費用3009億円や子会社からウィー・ワークへの投資関係で7208億円の損失計上もあり、赤字となった。

20年1─3月期の純損益は1兆4381億円の赤字だった(前年同期は1271億円の赤字)。ファンド事業の四半期損益は1兆1335億円の赤字(前四半期は2252億円の赤字)。

孫氏は「ビジョンファンドが大きくマイナスという形で経営の足を引っ張った」と述べた。投資する88社のうち、15社程度がコロナ禍を乗り切り大きく成長するとの期待を示した一方、15社程度は倒産するかもしれないとの見方を示した。ITバブル崩壊後にヤフーやアリババが多くの価値を生み出したとし「(成長する15社が)5―10年後の投資価値の90%ぐらいになるのではないか」と述べた。ウィーワークは「例外」(孫社長)と強調した。

ビジョン・ファンドは累積投資額8.8兆円に対し、1000億円の損失が生じていると説明し「これだけの景気の中でまあまあ悪くないんじゃないか」と述べた。評価損は可能な限り保守的に見てしっかり計上しているとしたが「先行きは誰にも分からない。第2波の感染がもっと大きく来るかもしれない。さらに評価損が出ないとは断言できない」と述べた。

ビジョンファンド2号については、自社の資金で投資を継続していると述べた。「大上段に構えてガンガン行くわけではない。用心しながら」としている。20年度の配当は「ゼロ配当もあり得る」とした。コロナの影響を踏まえ「万が一、資金がさらに必要になるとも限らない。増配はあまり考えられない。選択肢の幅をもたせたい」と理解を求めた。

SBGは4.5兆円の資産売却で資金を調達し2.5兆円を自社株買いに充てる方針を示している。残りの大半は財務改善に充て「新規投資は一部に抑えたい」と述べた。ビジョン・ファンドの出資先は8社が上場しており、資金回収は「時間の問題」(孫社長)とし、回収した資金をビジョン・ファンド2で投資することは可能との見方を示した。自社株買いの計画のうち、すでに枠を設定した1兆円分は、アリババ株を活用して資金を調達した。

SBGは同日、社外取締役を2人から4人に増やす方針を示した。孫社長は自身について、創業者でワンマン経営者と見られがちだとし「公開会社の立場をわきまえ、ガバナンスが重要としっかり受け止めていきたい」とした。

アリババ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏がSBGの取締役を退任することについては、同氏が19年にアリババの経営の前線から退いたことに触れ「彼の人生観の一環だと説明を受けた。これからも生涯に渡って友情は続いていく」と述べた。

出資する米携帯電話のスプリントがTモバイルUSとの合併手続きを完了したことに伴って、スプリントはSBGの子会社でなくなり、統合後の新会社TモバイルUSが株式の約24%を保有するSBGの持分法適用関連会社となった。

21年3月期の業績予想は公表していない。

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