彷徨うコンビニその7 山崎製パンがデイリーヤマザキを手放せない事情
「デイリーヤマザキ」の苦境が続いている。店舗数は業界4位のミニストップ(千葉県)に次ぐ規模でありながら業績は赤字が続く。中堅コンビニであるポプラ(広島県)やスリーエフ(神奈川県)などが相次いで大手の傘下に入ったなか、事業を継続できているのは、デイリーヤマザキは山崎製パン(東京都)の「一事業部門」であるためだ。デイリーヤマザキとしてはこのまま赤字状態を継続けるわけにはいかないものの、苦境からの脱出は茨の道である。
なぜ、スケールメリットを生かせなかったのか
デイリーヤマザキは、かつて日本の大手メーカーが志向した、「メーカー主導型チャネル」の典型例だ。
松下電器産業(現パナソニック)による、街の電器店を組織化した「ナショナルショップ(現パナソニックショップ)」や、資生堂系列の専門店網「チェインストア」のように、山崎製パンも“メーカー主導の系列店”を保有しようと始まったのがデイリーヤマザキ事業であり、古き良き時代の流通スタイルの名残りとも言える。
それゆえ、コンビニといってもデイリーヤマザキの加盟条件などは大手チェーン比べて相当柔軟であると言われている。2013年からは、必ずしも24時間365日営業しなくてもよい「ニューデイリーヤマザキ」という店舗パッケージも展開しており、加盟店オーナーの“加入しやすさ”がデイリーヤマザキのウリとなっている。
ただ、一時期は2500店以上の店舗網を誇ったデイリーヤマザキも直近は1300店まで店舗数を縮小している。なぜ、デイリーヤマザキは2500店超のスケールメリットを発揮できなかったのか。
その一説として、「プロダクトアウト的な発想から抜けきれなかったためではないか」という意見がある。この説を裏付けるのが、山崎製パンのセブン-イレブン・ジャパン(東京都:以下、セブン-イレブン)との焼き立てパンをめぐる確執だろう。
かつて、セブン-イレブンは、コンビニが手を付けていなかった「焼き立てパン」を加盟店に毎日配送するという事業に取り組んだ。同事業は全国のパンメーカーにパンを焼き上げてもらい、店舗まで配送するという仕組みだったが、この要請を山崎製パンは「自社ブランドを重視する」という理由で断ったのだ。
当時はまだ、小売業のプライベートブランド(PB)が今ほど流行していなかった時代。山崎製パンからすれば、「小売業の下請けになるのは言語道断」ということだったのだろう。つまり、「自社の強いブランドを専用のチャネルを売りたい」というガリバー型メーカーの「プロダクトアウト」の発想が根底にあったのは想像に難くない。
そうした成り立ちのためか、自社ブランドの専用販路でもある「デイリーヤマザキ」はパンを売るというメーカー主体の経営の補完的役割から脱し切れなかった。そうこうしているうちに、大手3チェーンは強烈な出店攻勢をかけ、店舗数で圧倒的な差を付けられてしまったのである。
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