第113回 SCとは、”商業テナント縛りの不動産賃貸業”である
ネット時代の店舗機能の役割とSCの使命
SCは1969年に開業した「玉川高島屋S・C」がプロトタイプであり、現在では数が増え、その総数は全国で3000を超えている。当初から、SCの至上命題は「施設内で商いをするテナントすべての健全な営業活動を担保すること」であり、SCの総数が増えても、この命題は変わらない。
そしてこの命題のもと、SC側は多くの客を迎え入れるために、環境デザインや館内動線を整備し、駐車場や休憩スペースを用意、広告宣伝や販売促進などのマーケティング活動を行い、テナントの収益を上げてきた。さらに、各々の店舗が別々に活動する商店街とは異なり、SCは、施設内で統率を取ることでテナントの売上を拡大する。しかし、昨今は人口減少、少子高齢化、競合の増加、ECなど購買チャネルの増加などが重なり、最強の流通業態と呼ばれたSCも減少傾向にある。
こうした状況下で、SCの役割・機能が単に販売活動を行う場所から、市民生活の基盤となる場所へと変化してきている。
SCは賃料ビジネスであるため、消費者ニーズに応え、とにかくお客に来てもらわないと始まらない。他方、少子高齢化が進行し成熟社会となっている昨今、消費者は、SCに物販だけでなく生活の一部として多様な用途が備わることを期待している。
さらに、SCが全国に普及した90年代以降に生まれ育った若年層は、物心ついた時からSCがあり、両親だけでなく、自らもSCで働いた経験があるなど、生活に深く密着している。以前、日本経済新聞で話題となった「イオンモール」で物欲を満たす「イオン女子」もその1つの例として挙げられるだろう。
このように、SCを初めて開業した時とは環境が変化し、SCに対するイメージも年代によって大きく異なっている今、SCの存在価値を再構築する時代が来ている。
西山貴仁
株式会社SC&パートナーズ 代表取締役
小田原市商業戦略推進アドバイザー、SCアカデミー指導教授、SC経営士、宅地建物取引士、(一社)日本SC協会会員、青山学院大学経済学部卒
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