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オープンから5年、1日の最高売上高更新の誠品生活日本橋、今後の成長戦略は

関川 耕平 (ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者)
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完成度の高い売場づくり、ユニークな商品ラインアップなどから世界的に評価されている台湾発の書店チェーン「誠品書店」。日本では書店チェーン大手の有隣堂(神奈川県)がライセンシーとなり、東京・日本橋で「誠品生活日本橋」を運営している。開店直後にコロナ禍に見舞われ、苦境が続いた同店だが、5周年を迎えた24928日に1日の最高売上高を更新。困難を乗り越え躍進を遂げている。さらなる成長をめざす誠品生活日本橋の売場づくりについて、有隣堂の担当者に話を聞いた。

知られざる台湾の魅力を発信

 大手ディベロッパーの三井不動産(東京都/植田俊社長)が、東京都中央区日本橋に、オフィス、商業テナントからなる複合施設「COREDO室町テラス」(以下、室町テラス)をオープンしたのが2019927日のこと。その開業と同時に、「誠品生活日本橋」がオープンした。同店は、室町テラスの2階フロアすべてを使用する、総店舗面積約2870㎡の核店舗だ。

 台湾発の書店チェーンである「誠品書店」は同地域内で随一の人気を誇る。そして、台湾台北市の第1号店「誠品敦南店」(205月閉店)は「アジアで最も優れた書店」(米『タイム』誌)に選ばれるなど、世界的に高い評価を得ている。

 誠品生活日本橋は、そんな「誠品生活」の中華圏外初の店舗としてオープンした。誠品生活日本橋は「くらしと読書のカルチャー・ワンダーランド」をコンセプトに掲げ、日本橋周辺で働くビジネスパーソン、観光客などをメインターゲットに据える。

 売場では、書籍だけでなく、アパレル、文房具、雑貨、食品などを幅広くラインアップ。台湾発祥のブランドを中心にセレクトするほか、文具では、台湾発の「藍濃道具屋(レンノンツールバー)」とコラボしたインクなども揃える。

 書店を中心とした文化圏をつくるという“場所の精神性”を重んじる誠品書店には、1つとして同じ店舗デザインはない。誠品生活日本橋でも、書籍や雑貨など、日本橋エリアで働く人のニーズを想定した商品、企画を展開していた。

オープン当初、広い通路には、売場ごとに暖簾が掛かっていたが、明るさと開放感を出すために取り外している

 開業時は「日経トレンディ」の「2019年ヒット予測」第3位になるなど、話題となった同店だが、開業直後から大きな困難に直面する。2020年に入って感染拡大が本格化した新型コロナウイルスだ。コロナ禍に入ったことで、店舗周辺の企業はリモート出社に一斉転換。ビジネスパーソンが激減し、売上は急降下することとなった。

 また、誠品生活が強みとするお客の“体験”を重視した店内イベントも大きく制限。コロナ禍前の199月~12月には約60回のイベントを開催していたものの、感染対策で室町テラス自体が閉鎖するなどの事態に陥った。有隣堂で店売事業本部担当部長 兼 誠品生活日本橋統括店長を務める鈴木由美子氏は、「周辺はビジネスパーソンも観光客もいない、寂しい雰囲気だった」と当時を振り返る。

 そんな中、オンラインイベントに注力していくのはごく自然な流れだった。

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記事執筆者

関川 耕平 / ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者

1995年生まれ。同志社大学文学部英文学科卒業。

24年に株式会社ダイヤモンド・リテイルメディアに入社し『ダイヤモンド・チェーンストア』の担当編集者となる。

趣味はクライミングとコーヒーを淹れること。特技と悩みは浪費と早食い。

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