参入多いが難しいアパレルの多角化戦略、成功の秘訣は?
服というモノは十分持っている
だから、モノからコトへ

「モノ」から「コト」へ、という言葉が業界を駆け巡ったのは10年ほど前だった。現代人が服という「モノ」をすでに多く所有し、これ以上は買い替え需要以外で「モノ」として買うことは少なくなるから、欲しくなるようなシーン(コト)を提案してお客さまに買ってもらおうということだ。あるいは、服というモノではなく、楽しいシーンなどのコトを販売する事業に進出しよう、という意味合いで合った。
しかし、産業界は言葉の本当の意味を理解せず、単にテナントミックスを「服だけ」から、カフェやシューズなどの売れているテナントを同じフロアに置いただけというのがほとんどだった。アパレル店舗にしても、単に服以外の雑貨の売上構成比を増やしただけだった。
とくに旧態化している小売は、「小売イコール完成品を売るだけ」に相変わらずとどまり、商品政策(MD)を広げることができなかった。だから、フロア構成を変えただけにとどまったのである。これではとても「モノからコトへ」とはいえない。
本連載で繰り返し説明しているようにアパレルビジネスは非常に特殊で、いわゆる「衰退期」というものがない。服以外の商品は、例えば、「カメラ」というニーズはデジカメからスマホに変わるし、レコードがCD、そしてオンラインストリーミングへとビジネスそのものが大きく変化するのに、服は外圧による劇的な変化がない。何があっても、われわれは服を着続けなければならないからだ。だから服のサプライヤーは毎年新しいものを考え、出し続けるわけだ。それゆえ、これまで「服」というモノに固執しても商売を続けることができたのである。
しかし、冒頭で述べたように、これ以上たくさんの服はいらない、と思っている人が多い。そうしたなかでアパレル企業が成長をするには、「多角化」は一つの重要な切り口になる。
前置きが長くなったが、そういうわけで今回はアパレル企業の多角化戦略について考えてみたい。
河合拓氏の新刊、大好評発売中!
「知らなきゃいけないアパレルの話 ユニクロ、ZARA、シーイン新3極時代がくる!」
話題騒然のシーインの強さの秘密を解き明かす!!なぜ多くのアパレルは青色吐息でユニクロだけが盤石の世界一であり続けるのか!?誰も書かなかった不都合な真実と逆転戦略を明かす、新時代の羅針盤!
河合拓のアパレル改造論2024 の新着記事
-
2025/03/12
ユニクロ以外、日本のほとんどのアパレルが儲からなくなった理由_過去反響シリーズ -
2025/02/18
ユニクロと競争せず“正しい”戦略ポジションを取っているアパレルとは -
2025/02/11
「あえて着ない」人が増加中 スーツ業界の復活はあるのか? -
2025/02/04
参入多いが難しいアパレルの多角化戦略、成功の秘訣は? -
2025/01/28
正しいTOC(制約理論)の理解 余剰在庫と欠品が激減する本当の理由! -
2025/01/21
儲かるアパレル、儲からないアパレルの違いが判明!「TOC」をわかりやすく解説!
この連載の一覧はこちら [60記事]
