世界の「自国ファースト」カントリーリスクにアパレル業界はいかに対応すべきか

河合 拓 (FPT Consulting Japan Managing Director)

リスク分散で行う「プラスワンとは」

 こうした、国ごとの政治、社会情勢、ビジネス上のリスクを分散化し、中国の北と南、東南アジア、タイ・ミャンマーのように、生産国を「分散化」をすることを「チャイナプラスワン」という。この「プラスワン」は、株式投資のようなもので、一点集中から複数にすることでリスクを最小化するというものだ。非常時に取り得る戦略というよりは、非常時に備えて採る「分散化戦略」である。

「最小ロットの問題」をいかに解決するか

 このように生産国を分散化すると、一つの国への発注量は少なくなる。特に、日本のアパレルは2万社弱あると言われ、そのほとんどが売上100億円未満だ。それを、仮に4分割すると、いままで50億円(アパレル企業の調達量は売上の約半分)だった発注量が25億円に減ってしまい、取引高が大きく減少する。こうなると最悪の場合、工場からお付き合いを断られるケースも起こるだろう。この場合どうすべきか。

 答えは、「商社を使え」だ。コスト意識を高めるため、自社貿易から商社をつかった間接取引にし、商社に他のアパレルとまとめてもらってロット数を上げるのだ。特に仲の良い商社は大事にし、小さいロットでも受け入れてもらえるように、普段からのコミュニケーションは大事にしたい。

 以上が、地政学リスクの回避方法・対応策である。

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プロフィール

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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記事執筆者

河合 拓 / FPT Consulting Japan Managing Director

Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はDX戦略などアパレル産業以外に業務を拡大


著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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