世界の「自国ファースト」カントリーリスクにアパレル業界はいかに対応すべきか
カントリーリスクに対応せよ!

サプライチェーン、サプライチェーン・マネジメントの意味を理解した上で、冒頭の話に戻ろう。対応すべきカントリーリスクとしては、「自然災害によってサプライチェーンが混乱した」「分断した」などという話に加え、ある国が政治的思惑(多くはポピュリズム的に国民の支持を取り付けるためだ)から巨大企業に目をつけ、「あの会社の製品の輸入には関税をかけろ」というように、ビジネスを政治的な意味で妨害するケースがある。政治の具にされる、あるいは国際間経済戦争で槍玉にあげられる(時にはとばっちりを受ける)ケースだ。「自国ファースト」の流れが世界中に広がってきた今、こうした政治・社会情勢のリスクも高まってきている。
また、日本のアパレル産業は、99%がオフショア生産(海外生産)なので、為替の上下で、仕入れ値が大きく変わる。特に、ドメスティックを中心にビジネスを展開している日本のアパレルは、大打撃を受ける。これに対してファーストリテイリングのような、日本で唯一といってよい、海外の方が日本の売上より大きく、また、利益も大きな企業は円安になると、海外の資産価値が大きく上昇するのだが、これはまだ特殊な事例だ。
海外に行けば国ごとにいろいろなリスクが存在する。例えば中国は「世界の工場」とよばれ、繊維製品のみならず、あらゆる産業の下請け、OEM(委託者ブランド名製造)などを受けている。この中国は、米国との経済的な対立から、コロコロと法規制が変わり、対応するのが非常に大変になっている。
中国 VS 米国といえば一昔前はイデオロギー(資本主義か共産主義か)だったが、今は経済対立に変化し、例えば、中国のウイグル地方で人権侵害が起きたとなると、ユニクロの製品輸入が米国で停止されたりした。このような、国ごとのリスクは千差万別だ。東南アジアは俗にいう「手が良い」(細かい作業が得意)のだが、繁忙期になると生産能力のパワーが弱いため対応できなくなるし、バングラデッシュやミャンマーなどは、非常に大きなロットの発注には対応できるが、リードタイムが非常に長く、また、細かな追加対応も難しい。このように、国ごとにさまざまなリスクが存在するわけだが、これを「カントリーリスク」という。
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