世界の「自国ファースト」カントリーリスクにアパレル業界はいかに対応すべきか
頻発する自然災害に政治的理由から起こる自国優遇主義がビジネスをするうえで、大きな障害になっている。そうしたなかで日本のアパレル企業はいまとこれからどんなことに注意すべきかをもまとめた。

アパレル産業は99%がオフショア生産!
アメリカ合衆国大統領に返り咲くドナルド・トランプ氏は前大統領時代と変わらず「自国ファースト」を高らかに叫び、国民の信を得ており、移民問題などを抱える欧州各国も次々と右傾化している。日本列島の上空を、核弾頭を搭載可能なミサイルが次々と撃ち込まれている中、日本人は相変わらず「アメリカ様が守ってくれるから安全」とばかりに、緊張感はない。
さらに、トルコ・シリア地震: 2023年2月6日にトルコ南東部とシリア国境近くで発生したマグニチュード(M)7.8の大地震。アフガニスタン・パキスタン地震: 2023年3月21日にアフガニスタン北東部で発生したM6.5の地震。モロッコ地震: 2023年9月8日にモロッコ中部で発生したM6.8の地震。フィリピン豪雨: 2023年1月から各地で発生した豪雨・洪水・地すべり。カリフォルニア州豪雨: 2023年1月にアメリカ・カリフォルニア州で発生した豪雨・暴風雨・洪水。などなど、サプライチェーンを分断する自然災害が世界のあちこちで起きている。日本でも、直近で2024年1月1日の能登半島地震をはじめ、あちこちで地震や水害が起きている。
こうした中、アパレル産業は99%がオフショア生産であるため、戦略的なサプライチェーン・マネジメントの構築を急がなければならなくなっている。
「サプライチェーン」とは何か
本論に入る前に、サプライチェーンの言葉の定義を確認しよう。よく混同されるのは、バリューチェーンとサプライチェーンの違いだ。
バリューチェーンとは、「価値連鎖」のことであり、そこを通れば、「価値が上がる」流れを指し示したものだ。例えば、生成りの糸を染色工場に投入し、青色に染めると、青色の糸が染色工場からでてくる。その場合、染め賃が白糸に付加されるわけだ。そして、染まった糸が編み工場にはいれば、青い糸が布となってでてくることになる。この場合、白い糸は染色工場で色という付加価値をつけ、横網されて布になるバリューチェーンを通って、付加価値をつけてゆくわけだ。
これに対してサプライチェーンは、特にその場所を通ることで付加価値が付くか否かは関係ない。例えば、商社等が口銭(商社の利益)をグループで分けるため、子会社に仕入をさせて売上を上げるということをやっている。この場合、この子会社はサプライチェーン上に存在はしているが、何ら付加価値は付けていない。むしろ、外した方がよい。この場合、この商社の子会社は、サプライチェーン上には存在するが、バリューチェーン上には存在しないことになる。
そして、このサプライチェーンを管理する(management)ことを「サプライチェーン・マネジメント」というわけだ。これを短縮してSCMなどというが、最後のMは「管理」という意味が含まれているから、「SCMが台風で分断された」という表現をよく目にするが、これは誤訳だ。サプライチェーンの管理が分断されたのではなく、サプライチェーンが分断されたという意味にすべきだ。あえて短縮して使いたいなら「SC(Mが付かない)が分断された」というべきだろうがSCだと他の言葉の略語が想起される。ここはよく間違えて使われているので、気をつけたい。
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