ユニクロ柳井会長がウイグル綿花不使用発言に至った理由と影響、その複雑な背景とは
次期トランプ政権下で新疆綿問題は?
ファーストリテイリングからしてみれば新疆面問題は大きな“頭痛の種”である。人権問題を背景に欧米諸国は新疆ウイグル自治区の強制労働問題で「ウイグル自治区産の綿を使用しない」ことで足並みを揃えており、これまでノーコメントを貫いていたファーストリテイリングを槍玉に挙げてきた。
一方ファーストリテイリングにとって中国は、生産拠点としても販売拠点としても極めて重要な国だ。ユニクロの売上構成は、日本国内での販売と海外での販売が「1:2」(24年8月期国内ユニクロ事業9322億円、海外ユニクロ事業1兆7118億円)で、さらに海外の販売のうち40%が中国市場(グレーターチャイナ、同期売上収益は6770億円)だ。
広大な中国ではまだまだ出店余地がありユニクロが売上5兆円そして10兆円を達成するには、いっそう中国市場を深耕していくことが不可欠だからだ。
しかし、その重要な市場に向けて「ウイグル自治区産の綿を使用しない(していない)」と言ってしまえば、中国政府、中国人民から反発を受けることは必至であった。
いわばどちらに転んでも悪いことしかないのである。
ここにきて大統領選挙で勝利したトランプ氏が「すべての中国製品に、さらに10%の輸入関税をかける」と宣言した。当然、中国も報復措置をとるだろうが、ファーストリテイリングにとってしてみれば、さらなる板挟みとなった格好だ。「プラスワン政策」で、中国一辺倒から分散する戦略をとったとはいえ、今後もノーコメントを貫けば、トランプ氏によってさらに槍玉に挙げられる可能性は高いからだ。
このように、両国間の緊張が高まり、また自社への影響が高まることが予想されるなかで、これ以上「ノーコメント」を貫くことは、同社にとって長い目で利益にならないという結論に至ったのではないか。だから柳井氏は「新疆面は使っていない」と発言し、旗幟鮮明にしたのであろう。
中国でのユニクロの販売への影響をどうみるか?「商品がよければやがて沈静化してゆく」という考え方は楽観的過ぎるかもしれない。米中の政治的対立が絡んでいるとしたら、両国がなんらかの歩み寄りを見せない限り、いくら商品がよくても中国人民が中国政府の意向に反することはしないし、できない。
また米国での販売にも影響がでる。ユニクロにおいて中国は生産拠点の要だ。いまユニクロの価格に大きな関税をかけられたら(トランプ次期大統領は、中国製品への追加関税を明言、迂回輸出も厳格に防ぐ方針を示している)、米国でのビジネスに大きな影響を与えることになるだろう。
そうしたわけで今回の発言の影響の度合いは読み切れない部分が多いのだが、少なからぬ影響を与えることだけは間違いない。金曜日のこの発言を受けて、12月2日月曜日はファーストリテイリング株価が一時2%下落、その後やや取り戻し1.43%下落でこの日の取引を終えた。
私達は消費者としても投資家としても、米中対立構造とその狭間で影響を受けざるを得ない企業の動向と戦略をじっくりとウォッチする必要がある
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プロフィール
株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。
著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「
筆者へのコンタクト
https://takukawai.com/contact/
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