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アパレルは「個人売買」「古着」が、今後驚くほど拡大する理由

本日は、アパレルにおける個人間取引「C2C」について所見を述べたい。メルカリが普及したことで、個人同士で衣料品を売買することが普通になってきた。これにより市場規模は近年大きく拡大しており、ECを使ったC2Cの市場規模は、経済産業省によれば2023年で2兆4817億円と推定され、これは前年比で5%の増加だ。このうちどの程度が衣料品かはわからないものの、市場規模が大きくなっていることは間違いない。このように拡大が止まらない衣料品の消費者同士の売買はなぜおきるのか。私の分析を披露したい

loveshiba/istock

「お姉ちゃんのお下がり」が存在しない

 「この服お姉ちゃんのお下がりなの」というフレーズは、私と同じバブル世代の人間であればよく聞いたと思う。しかし、このなんともないフレーズには、同性の姉妹がいることが前提となっている。平たく言えば、2人のカップルから2人以上の子供が産まれなければこのフレーズは聞かれない。

 しかし、今は2人のカップルから生まれる子供の数は2をきっている。とくに、子供服などは百貨店で高額な商品が売られているが、幼稚園、小学生ともなれば、毎年体型がかわり、身長も伸びていく。姉妹がいれば、カラダの小さい妹に着させればよいのだが、今は姉妹がいない。となると、家族間をまたいで服が行き来することになる。これが子供服の「お下がり」がC2Cになるメカニズムだ。

「古着がかっこいい」時代になる理由

 次に、成人になったらどうなるか。今、Z世代とよばれる世代は日本という国の将来に希望をもっていない。物価はあがり、給与は下げ止まったままだ。自然に、彼らのファッションは古着などになってゆく。幸いにも、ピカピカのスーツを着て会社にいく習慣はどんどんなくなっており、ネクタイまでしめるのは、一部の金融機関ぐらいである。流石に破れたデニムはまだ許されないが、デニムとTシャツで会社に通勤する人の姿を見るようになった。

 そこでアパレルは一生懸命Tシャツの価格を上げており、今は、5000円から10,000円もするほどTシャツが高くなってきたが、私には最後のあがきにしか見えない。

 

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lechatnoir/istock

 そうなると、少しよれてくたびれた「セカンドハンド」(古着)のTシャツが格好良く見えてくる。徐々にSDGsが消費者の中に浸透してきたこともあり、「古着こそかっこいい」という潮流ができあがったわけだ。

 かくいう私も気軽に服を捨てられなくなってきた。昨年買ったダウンジャケット、シャツ、パンツで十分だ、という気持ちになってきた。生粋の服好きの私でさえそう思い始めたのだから、多くの人も同じように感じ始めたのだろう。

 私の場合、毎年シーズンの変わり目には、古い服を娘にどさっと渡す。娘はメルカリが大好きなようで、「パパの服は高く売れるから良いお小遣いになる」と、一枚ずつ、写真をとって近所のコンビニで送って数万円というお小遣いを稼いでいる。全く感心するばかりだ。

 かくいう私自身も妻と代官山に散歩にいったとき、セカンドハンドの衣料品を買ってくる。主に、デニムを購入するのだが、気に入った物があればアウターやコートも買うかもしれない。今、一番欲しいのは腕時計だ。特にロレックスは正規店では完売で欲しい商品は投資目的で買われてしまい、中古時計専門店などの「二次流通店舗」で売られている。値段はビックリするぐらい高いのだが、それでも買う人がいるから、そんな値段をつけているのだろう。C2Cには、その商品が持つ「市場価値」を反映させることができる。

これから服は二次流通へ

 3年前、「これから服は二次流通がメーンとなり、多くの人は二次流通品をもとめるだろう」という論考を書いたところ、読者から「アパレルが補修屋さんになるという意味か?」と茶化された。

 しかし、二次流通品を取り扱うのが「補修屋さん」なら、クルマの中古車販売はどうなるのだろうか。クルマの補修屋さんといえるのか。これは、企業の責任が、「売って終わり」から「売った後も品質を保証する」に転換したという意味に等しいのだ。

 フランスでは企業が売れ残りの新品の衣料品を廃棄することが法律で禁止されており、違反するとペナルティを課される。今後その動きは欧州全体へ広がる見通しだ。また消費者が服を補修する際、補助金を支給する取り組みもフランスでは始まっている。

 欧州は、日本よりも環境意識が進んでいるので消費者も商品提供者も脱廃棄、物を長く大事に使う方向に進んでいる。日本はどうか? この異常気象ともいえる熱帯化が進み、もはや「消費者が分かってくれる」などと悠長なことをいうのではなく、私が昔から提唱している「在庫税」や「リサイクル素材の使用」をマストにし、約束をやぶったらペナルティを課すぐらいのことをしなければ、どんどん地球の環境は破壊されてゆく。私達は、すでにそのことに気付いている。

 そろそろ、本気で私達は欧米のアパレル企業のコスト構造、SDGs対応、法律、社会などを学び、この問題に真剣に取り組む必要がでてきたと私は思う。C2Cとは、単に消費者間のビジネスのことをいうのではなく、ここまで重要な意味をもっているのだ。

 

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プロフィール

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

筆者へのコンタクト
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