ライザップ傘下の夢展望、Temu効果で株価高騰も拭えない「不安」とは
日本のTemuで販売後、「いきなり海外」は通用するのだろうか?
私は、最初「Temu」と聞いて「なるほど」と思ったものの、同時に「大丈夫だろうか」と疑心暗鬼にもなった。確かに、Temuの流通を使えば、それなりに「流れ弾」にあたり、売上は伸びるだろう。その意味では、投資家の期待=「株価の上昇」は正しいといえる。
しかし、良い意味でせっかく個性がでてきた夢展望が、「Temuのような一般通販と馴染むだろうか」という点が一つ。もうひとつは、価格帯であるが、夢展望の価格帯は私がやっていたときとくらべて相当高くなっている。Temuといえば、激安ディスカウンターだ。だから、消費者も買うしTemuも自社のアパレル部門に組み込めるわけだ。Temuのアパレルラインは無個性で欲しいものを探すのが一苦労だが、女性向けワンピースが3000円でスーツが5000円と夢展望より安い。
また、夢展望はTemuが展開する日本向けサイトを皮切りに、世界市場に打って出る戦略を打ち出している(海外展開の強化とブランド保護がTemuとの連携の目的)が、まずは日本でブレークする方が先ではないだろうか。
なぜなら今、世界は中国企業が席巻し、ギャル・ブランドは韓国のお家芸であるし、ガーリー系のブランドは海外で売れるかどうか未知数だからだ。ただ、急増するインバウンド客が秋葉原に行って、アニメ、漫画などのジャパン・カルチャーを謳歌しているのをみると、海外でこのラインは一定数の顧客を獲得できるかもしれない。その意味では、不安が勝るものの、可能性もあるということだ。
いずれにせよ、日本は人口減少によって市場としての魅力はますますなくなっており、また、物価の高騰により高価な服が売れなくなっている。各社各様戦い方は違えど、夢展望のように、世界に目を向け始めたのはよいことだ。
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プロフィール

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。
著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「
筆者へのコンタクト
https://takukawai.com/contact/
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