好調ユナイテッドアローズ!「低い賃借料率」が成長阻む意外な理由
低い賃借料率が成長を阻害してきたとも考えられる背景
次にコスト構造をみてみる。連結ベースの売上高販管費率は46.7%(対前期比増減なし)とアパレル小売業としては低い水準を維持しており、良好な状態にある。
販管費の内訳をみると、売上比で宣伝販促費2.9%、人件費15.7%、賃借料13.7%、減価償却費0.7%、その他13.7%となっている。
ここで注目したいのが売上比で13.7%の水準に収めている賃借料だ。私はユナイテッドアローズの強さの秘訣は不動産コストの低さにあるとみている。これが、百貨店アパレルになると売上比で30%を超え、例えば新宿の伊勢丹クラスになると家賃見合いは50%近くにもなる。
一方で、この「13.7%」という低い賃借料率は、同社の海外出店を阻んできた元凶でもあろう。
というのは、ユナイテッドアローズのブランド力は日本では絶大、ゆえに良い条件で出店できるし売上を稼ぐことができる。逆に海外にでれば賃料は、売上比で25%から30%程度の水準となることが予想され、営業利益が吹っ飛んでしまうからだ。日本で強いブランド力を持っているがゆえに、海外に出るとコスト構造が変わり、海外での出店拡大の機会を逃してしまっているとはいえないだろうか。
ちなみに、一説によるとファーストリテイリングクラスになると海外における家賃は売上比で15%程度かそれ以下に抑えていと言われている。要は、「勝てるフォーマット」ができているのだ。競争相手が国内事業を“エンジョイ”しているときから、ファーストリテイリングは幾度も海外にチャレンジし、海外でブランド力を高めていったのだ。いまからでも苦労して、海外で「勝てるフォーマット」を構築していくほかはない。
単体EC化率25%とその先
次に単体のチャネル別売上高をみてみたい。単体のチャネル別と書いてあるものの、ブランド別ではなく、大まかには流通チャネル別である点は要注意だ。小売、ネット通販、その他からなる「ビジネスユニット計」と「アウトレット等」の2つに分かれている。そして、それぞれのチャネルのなかに、「ユナイテッドアローズ」や「グリーンレーベルリラクシング」「ビューティーアンドユース」など、様々なブランドが含まれているため、一括りでは語れないことをもう一度確認しておきたい。
ここで注目すべきはEC化率だ。24年3月期で約25.3%となっており、いずれ30%に届く勢いだ。今、調子の良いアパレルのEC化率が30~40%であることを鑑みれば、もう少しEC化率を上げたいところなのだが、ここで「但し書き」がつく。
くどいようだが、ECは、ZOZOなどの第三者ECへの出店は、単に顧客をプラットフォーマーに捧げるようなもので、いま同社が力をいれている自社ECにどれだけ顧客を誘引できるかにかかっている。この点については同社が23年8月から新たに開始した会員向け新プログラム「UAクラブ」に期待したい。
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