ユニクロ以外、日本のほとんどのアパレルが儲からなくなった理由
「SPA=強い」わけではない 日本企業の大いなる誤解
2000年、米国ではアパレル向けのサプライチェーンマネジメントを実現するプロジェクト、「DAMA project」が産官学連合でスタートした。産業界の業務フロー、コードルールなどの統一化・標準化をするもので、アパレル業界の各社に多大な利益を生み出した。日本でも「QRAI」という大規模な産業横断的なサプライチェーンの構築を目指す動きが一時動きだしたものの、知らない間にフェードアウトしてしまった。
ここで日本は大きなミスを犯した。
「SPA」という用語の誤訳だ。再三述べているように、SPAとは専門店、自主企画、アパレル企業という3つの意味を繋げたもので、日本で言う「製造小売」などという意味は少しも持ち合わせていない。
これは、某メディアが誤訳したといわれているか、真偽のほどは定かでない。そのため、ニトリやABCマートまでSPAと呼ばれ、その競争優位分析はなおざりにされたのである。
SPAという言葉が曲解された結果、小売自ら製造設備を持つこと、メーカー自ら小売機能を持つことをSPAとよび、次々に日本のアパレル企業は過剰在庫をもち破綻していった。
レナウン、ヴィクトリア・シークレット、フォーエバー21などの経営破綻とシーイン、TEMU、ZOZOなどネット企業の台頭は極めて対照的だ。シーインの売上は世界で4000億ドル(約6兆円、筆者推定)といわれ、また、日本だけですでに約 4000億円近い売上(同じく筆者推定)を稼いでZ世代の客を根こそぎ奪っているが、日本のアパレルはなんの対策も講じておらず、もうすぐ定年退職するバブル世代の顧客とともに年をとっている。シーインは学者やコンサルの「知ったかぶり」であれこれ間違った情報が流れているが、やがて上場すれば、ファーストリテイリングを追い抜き世界第二位であることもあきらかになるだろう(現在米国で上場申請中)
ここで知っておきたいことは、「SPA企業」が必ずしも強いわけでなく、良質な「個」客をたくさん保有している企業が高い売上を上げており、SPA万能論が崩れはじめているという点だ。もしも「SPAが万能である」なら、フォーエバー21はもとより、SPAの元祖であるGAPが圧倒的な競争負けをし続けている理由がないではないか。
SPAは万能ではないと言ったが、SPA企業のなかには圧倒的に勝ち続けている企業がある。それがファーストリテイリング、ユニクロだ。大きくなりすぎたユニクロに対しては、世界各地で政府によるさまざまな横やりが出ているが、同社は積極的に自ら変化し状況を打開している。
米国では21年、中国の綿糸が強制労働を新疆ウイグル自治区で行っているという理由から、ユニクロの一部の服の輸入が差し止められたことは記憶に新しい。フランスでも、パリでも服を捨てることに罰則規定が続き、2024年3月には、ユニクロは同社の衣料品の二次流通事業を発表している。
さて、服というのは、なければ困るが不況になれば買い足す必要はないため、貧しくなっている日本のマーケットで、ユニクロ一強になる理由がよくわかる。今でも国内アパレルマーケットは10兆円の市場規模を持ち(外資の非上場企業は含まない)、うちユニクロが15%を占める一極集中の構造だ。そのなかでアパレル産業の本質は「ウルトラロングテール」であり、それゆえ生産性は極めて悪い。
それに対して自動化の技術もあるのに、それを使ってこなかったのが日本の繊維・アパレル産業で、それゆえ産業危機に陥っているのである。
そしてかつて「儲かったビジネス」の呪縛に多くの企業はいまだに取りつかれているのである。
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プロフィール
株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。
著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「
筆者へのコンタクト
https://takukawai.com/contact/
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