コロナ収束後も増収増益見込みの生協 今後の成長を阻む壁と直近の施策
全国の生協の連合会である日本生活協同組合連合会(東京都:以下、日本生協連)が、2023年の事業概況を発表した。コロナ禍で大きく利用が伸長した生協はそのぶん、反動減が懸念されていたが、総供給高(小売業の売上高に相当)増収増益を達成見込みだ。しかし中長期的な成長に向けては課題が残る。生協の現状と今後の課題について解説する。
宅配事業が高止まり
商品値上げが業績を底上げ
日本生協連は2月6日、毎年恒例の新年記者会見を開催した。23年度の事業概況について事業担当専務の藤井喜継氏は「コロナ禍で総事業高(営業収益に相当)が2桁成長し、コロナ後も高止まりで推移している」と順調な見通しを述べた。
コロナ後に予想された急成長の反動は、食品宅配市場の拡大を背景に抑えられ、23年度第3四半期(4-12月期)までの宅配事業の供給高(売上高に相当)は対前年同期比99 .8%とほぼ同水準を維持した。店舗を含めた総供給高は同100.6%と、21、22年度の2 年連続の減収から23年度は増収に転じる見込みだ。
総供給高の増収は、商品の値上げで、宅配、店舗事業ともに、客単価がアップしたことが主な要因となる。半面、利用人数と利用点数は減少した。とくに今後の成長の柱である宅配事業の成長の原動力は組合員数の拡大だが、コロナ後、配達担当の人手不足の影響で勧誘活動に手が回りきらず、新規加入数は目標を下回り、利用人数の減少につながった。
収益面については、コープソリューション調査では、第2四半期までの経常剰余(経常利益)が同102.3%と前年を維持。年末商戦の宅配と店舗事業の総供給高が同104.4%と好調だったことを踏まえ、増益となる見込みだ。
直面する5つの課題
今後の生協の成長を担う宅配事業は、20年度供給高が2兆1000億円を超え、食品宅配のトップランナーの立ち位置を堅持している。しかし、今後については楽観視できない。
直面している主な課題は大きく5つある。ラストワンマイルを担う配達担当の人手不足、燃料費や車両価格、人件費など事業コストの増加、競合との競争激化、デジタル改革の遅れ、組合員の高齢化と若年層の加入推進だ。
生協宅配がここまで複合的な課題に直面した例は過去にない。なかでも、若年層の加入推進と人手不足への対策は、今後の事業成長に関わる重要課題と言えそうだ。
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