SPA企業を養分にする!勝ち組が次々移行する「ノン在庫マッチングビジネス」とは何か?

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
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顧客データの活用が、これからの新業態となる

metamorworks/istock
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 アパレルビジネスは伝統的に、小売機能と生産機能が分離していた。また、昨今のデジタル化の影響か、事業の論点は商品軸のビジネスモデルから、顧客軸のビジネスモデルに変わってきた。具体的に云えば、いまは商品の動向からMDを組み立てるのでなく顧客の買い回りデータからMDを組み立てるべきなのだ。しかし、多くのアパレル企業は顧客のデータを持っていない。持っていても、活用をしていないか活用できないのである。

 これからの時代は、データの質と量が競争優位を決めることになる。その中でも最も重要なのが顧客データだ。顧客データをつかって、徹底してパーソナライズ・ビジネスを行う。例えば、Amazonは、日本で36000億円も売上があるにも関わらず、Amazonのトップページは、「河合拓専用」のページになっている。私の買い回りデータから私の嗜好を分析し、トップページに載せることで私の購買心をくすぐるのだ。これを顧客一人ひとり違った見せ方をしているわけだ。私はカメラが趣味なのだが、例えば、カメラを買うと「新しいレンズがでましたよ」とメールが飛んでくる。

 データには、買い回りデータのように動態的なダイナミックデータと、名前や性別のように変わらない(動かない)スタティックなデータの2種類がある。伝統的にアパレル企業やカタログ通販企業は、後者のスタティックなデータを元にRFM分析で顧客に序列をつけていた。しかし、最新の考え方は、前者のダイナミックデータを解析し、セット率や購買頻度などを分析。どんどんレコメンドメールを送るというものだ。「この前、こんな本をお買い上げいただいたので、今回新書がでましたよ」という具合だ。このように、動くデータ(ダイナミックデータ)を徹底して使うことで顧客のデータをどんどん大きなものにしていく。

これからの勝ち組は ノン在庫モデル×ダイナミック顧客データ

 今、これはSPAだ、これはアパレルだ、これは小売だ、と業態分類をしているが、もはや業態分類は無駄以外のなにものでもない。

 小売が商社を使って製造機能を持つ。工場を持つアパレルが百貨店の中にPOSをいれて、擬似的に製造小売になるなど、バリューチェーンに違いが無くなってきたからだ。また、衣料品だけ扱っていた業態が雑貨や食品を扱うなどMDの幅も拡大してきた。

 つまり、縦の拡大(バリューチェーンの垂直統合)と、横の拡大(MDの広がり)から、ほとんど全てのアパレルにおいて、「繊維出身」とか出自の違いを除き、機能的差がなくなってきたのだ。

 こうしたことから今の勝ち組企業のビジネスモデルは、違いのなくなったSPAアパレル(在庫リスクをもっているアパレル)を複数モール型ECに集めてプラットフォーム化し、自分は在庫リスクを持たずに預託在庫にして、最終顧客が購買した時点で仕入と出荷・売上を同時に行う「ノン在庫モデル」である。

 この「ノン在庫モデル」に、先に論じた「ダイナミック顧客データ」を組みあわせたアパレル専門店が、ZOZO、シーイン、DHOLICなどである。これら「勝ち組企業」は、「SPA万能論」に汚染されたテナントに在庫リスクを持たせ、みずからは在庫を持たず、膨大な顧客データを解析し需要と供給をマッチングさせているのである

 

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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