売上規模もEC比率も関係ない!勝ち組アパレルに共通する「ライトオフ期間」の長さとは?
今、勝っているブランドは値引きせずライトオフ期間が長い
これだけ世の中が変わっているのだから、昔の教科書の多くは既に使えなくなっているものが多い。例えば、売上は落ちていてEC化率が4%程度もないのに、営業利益率で10%もたたき出しているアパレル企業がある。理由を聞いてみると、年度落ちの商品を再プレスし、5年かけて売り切っているという。その企業のオフ率は10%程度以下で、残品率はゼロだ。
破竹の勢いで成長しているワークマンは、オフ率が3%でライトオフ(在庫の損金処理)までの期間は5年から10年である。もはや世界企業に成長したユニクロ、GUのKPIは知るよしもないが、調達原価率で40%以上もかけて利益をだしているのだから、必然的にプロパー消化率は7-80%を超えていると単純計算できる。同社の商品は、GUを除いてベーシックなものが多いから、一般アパレルのように1年から2年でライトオフをしているとは考えにくい。つまり、今勝っているアパレルの勝ちパターンは皆同じで、値引きをせずに定価販売を続け、売り切るまで時間をかけている、ということなのだ。
私は、高い利益率を出している企業を売上規模に関係なく徹底して調べた。結果、勝っている企業は、ライトオフの期間が長く、3年から5年ということが分かった。これに対し、売上を上げるために余剰在庫を積み増し、低価格でたたき売り、期末に損金処理、あるいは評価減を行い業績悪化させている企業は、ライトオフ期間が1.5年から2年だった。
高い利益率をだしている企業というのは、「時間」を強い味方を身につけ、ZARAなどのハイテク技術を駆使し、世界中に数万人のリサーチャーを配置し、膨大な情報をデジタルアナリティクスで分析しながら計画生産し、トレンド・ターンを高速回転させる外資企業と闘っている。残念ながら、日本にファッショントレンド・ターンでZARAなどに勝てるだけのビジネスモデルを持っている企業はない。
アパレル業界は一部の勝ち組企業を除いて全滅に等しい。まさに「藁をもすがる思い」の断末魔、ノアの箱舟が昨今のデジタルツールである。前置きが長くなったが、私が転職をしてまで知りたかったデジタルツールのリアルな実態、そして、成功するための戦略を次回以降に書いてゆく。
プロフィール
河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)
ブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)