イオンGMS復活の命運を握る「そよら」、非食品復権のカギはあのホームセンター?
筆者は流通アナリストとして活動する傍ら、起業家支援活動も並行して行っている。湘南地域を生活圏として暮らしており、「湘南藤沢インキュベーションLABO」という研究開発型ラボ内で原稿を執筆することも多い。最近、このラボの近隣にあった総合スーパー(GMS)の「イオンスタイル湘南茅ケ崎」が、イオンリテール(千葉県)が展開する新型商業施設「そよら湘南茅ケ崎」としてリニューアルオープンした。
都市型SC「そよら」が続々開業
イオンリテールの公式HPをみると、「そよら」とは「そら、寄って、楽しんでって」との呼びかけが由来として、「都市に住む人の生活をもっと楽しく心地よくするための施設」として開発された、とある。
この屋号を関した商業施設は他にも、「海老江」(大阪市福島区)、「北金岡」(大阪府堺市)、「上飯田」(愛知県名古屋市)、「東岸和田」(大阪府岸和田市)、「武蔵狭山」(埼玉県狭山市)があり、日本の3大都市圏の小商圏をターゲットとした、イオンの都市型ショッピングセンターの新しいフォーマットであるという。イオン(千葉県)グループでは、「イオンモール」「イオンショッピングセンター」と並ぶ都市型ショッピングセンターの新フォーマットとして、これから出店拡大をめざしていくとしている(図表)。
そよら湘南茅ケ崎は、1階に核店舗となる「イオンスタイル」とフードコート、2階にホームセンターの「カインズ」、映画館の「イオンシネマ」、自転車専門の「イオンバイク」など、3階には「DAISO」「Standard Products」「THREEPPY」の“ダイソー3兄弟”のほか、家電量販店の「ノジマ」、靴専門店の「ABCマート」、カジュアル衣料の「Honeys」などが入る。専門店はどれも広い売場をそれぞれ持っており、日常生活に必要な商品がほぼ揃うテナント構成になっている。
1階のイオンスタイルはGMSではなく、「フード&ドラッグ」(食品売場+調剤併設ドラッグストア)という購買頻度の高い商品群に絞られており、衣料品、生活雑貨などの日食品は、主にテナントが担当する構成となっている点も注目だ。
「そよら」を展開する狙いは?

「そよら」がどんなコンセプトのショップングセンターかといえば、「生活必需品(サービス)ワンストップ」といったイメージであろう。イオンのリリースをそのまま引用すれば、「スーパーや雑貨店、カフェ、クリニック、カルチャー教室など、生活に密着している施設が別々に立地していることが多い都市部では、交通網の発達やアクセスの良さから仕事がある日でも施設に立ち寄れるため、『もっと手間なく楽に買物したい』『身近なところで買物を済ませたい』『ネットも店舗も効率よく使いたい』などの利便性がより求められ、買物や用事を一カ所で済ませたいというニーズが高まっています。」ということになる。
「ワンストップショッピング」というキーワードは、かつてからGMSが強みとしており、決して目新しいものではない。そよらの「生活必需品ワンストップ」という新しい概念は、近年の女性就労率の向上、共働きファミリー層の増加を背景として、ワンストップニーズが休日と平日で二分化したという社会環境の変化を前提としている。
2000年初め頃までは、女性の年代別就労率は「M字カーブ」といって子育て期には就労率が下がるという構造で、女性の免許取得率も高くなかった。そうした事情もあって、GMSは休日に「お父さんの運転するクルマ」に乗って行き、ワンストップで買物ができる便利な場所として流行っていた。当時、平日はドライバーである父親が勤めに出ていていないため、母親が徒歩、あるいは自転車で行ける近所で日々の買物をするという行動が主流だったのだ。
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