止まらないスーツ需要減に「3ない」で攻勢!青山商事、本気のビジネス大転換とは
高収益体質へ、儲かる強みを研磨
こうした体質改善による生産性の向上と多様化するニーズへの対応力強化で、同社はスーツ屋からビジネスウエアを提供する企業へと生まれ変わり、より収益力を高めていく。
大胆な店舗戦略と併せ、儲かる事業の強化も推進する。筆頭格はレンタル事業だ。長谷部氏は「レンタルが好調に推移している。額としては小さいが、まだまだ伸びる余地がある」と見込む。
その根拠として「最近同業他社も始めたように、一定の需要がある。値上げラッシュで生活防衛しないとなかなか難しくなってきている背景もある。そうなると自ずと、所有せずレンタルという選択肢も出てくる。借りることがより一般的になってきている」
フォーマル軸にレンタルも活性化
レンタル部門では「フォーマル」がキーワードとなる。オケージョン需要の回復で売上は順調に伸びており、今期は前年比13億円増の185億円を見込む。レンタルサービスの「ハレカリ」は売上こそ4億円だが、前年比175.2%で大化けも見込めそうな勢いだ。
販売とレンタルで相反するリスクもあるが。むしろ同社の技術力や品質を実感してもらう機会として相乗効果を生み出し、双方を伸ばし、フォーマル全体として強化していく。
店舗ならではの価値向上にも注力
直近1年でデジタル会員を200万に増やし、EC/OMOの売上を32億円まで伸ばすなど、デジタル化を加速させる同社。だからといって、店舗力を弱めるつもりはみじんもない。むしろ、高い縫製技術を最大化する方向で、店舗ならではの強みはしっかりと磨き上げる。
いわゆるソーイングトレーナーといわれる縫製技術を持つスタッフの増強もそのひとつ。今期中に 1 店舗 1 名を目指し、将来的には 1000 名体制を目標とする。
スーツ専門店として培った強みを最適化しつつ、DXや消費の多様化にも全方位で対応し、リブランディングを着々と進める同社。アパレル業界全体が多様化傾向にあり、競合の線引きもぼやける中で、もはや差別化よりも、どれだけ経営体質を改善し、売れるものに柔軟に対応し、利益を生み出せるかが今後の生命線となっていきそうだ。