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第2回 セブン&アイ、イオンの2トップはいち早くSDGsに着手

小売業のSDGs

SDGsに注目が集まる昨今、すでに企業活動に取り込んで実践している企業がある。そこで、各企業のCSR報告書や農林水産省のSDGs特別サイトなどを参考に、小売業における主な取り組み事例を紹介する。

5つの重点課題を特定=セブン&アイHD

セブン&アイでは「5つの重点課題」を特定 写真はロイター

 セブン&アイ・ホールディングス(東京都/井坂隆一社長)では、社会課題が多様化するなか、さまざまな立場のステークホルダーとの対話を約1年間かけて行い、取り組むべき「5つの重点課題」を2014年に特定した。

 具体的には、「高齢化、人口減少時代の社会インフラの提供」「商品や店舗を通じた安全・安心の提供」「商品、原材料、エネルギーのムダのない利用」「社内外の女性、若者、高齢者の活躍支援」「お客様、お取引先を巻き込んだエシカルな社会づくりと資源の持続可能性向上」の5つであるが、いずれもSDGsとの関連性が深い。

 「5つの重点課題」を特定したことで、本業を通じて課題解決を図ろうとする認識がグループ内で徹底されるようになったという。また、グループとしてSDGsにどのように取り組んでいくのかという方向性をステークホルダーに示すことができたため、社会課題を踏まえた商品の開発に取り組むようにもなった。

 そのひとつが、プライベートブランドでのMSC認証*1商品やフェアトレード認証商品の開発・販売だ。これまではこうした商品はナショナルブランドのみの販売だったが、環境意識の高まりやエシカル消費の認知拡大も後押しして、18年10月よりセブンプレミアム初のMSC認証商品「セブンプレミアム 辛子明太子」を発売。食品スーパーや総合スーパー、コンビニエンスストアなどさまざまなチャネルで展開している。

 また、健康や栄養に対するニーズが高まるなか、「安全・安心、健康」にこだわった商品の展開も強化。食品の添加物の使用を低減し、栄養バランスのとれた食品を提供することに努めている。

*1 イギリスに本部をおく海洋管理協議会(MSC)による認証であり、生態系や資源の持続性に配慮した方法で漁獲した水産物であることを示すもの

イオンは調達原則を制定

イオンは2017年より「持続可能な調達2020」を制定。自然資源の持続可能性に重きをおく。 写真はロイター

 イオン(東京都/岡田元也社長)では、「お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する」という基本理念のもと、「持続可能な社会の実現」と「グループの成長」の両立をめざしている。

 「イオン サステナビリティ基本方針」として、「環境」と「社会」の両側面で推進しているのが特徴だ。

なかでも注目すべきは、14年2月に制定された「イオン持続可能な調達原則」だ。

 自然資源の持続可能性と事業活動の継続的発展の両立のため、自然資源の違法な取引・採取・漁獲の排除やトレーサビリティの確立などを明言している。17年4月には、農産物、畜産物、水産物、紙・パルプ・木材、パーム油について「イオン持続可能な調達方針」、および「持続可能な調達2020年目標」を発表。グローバル基準に基づいて生産された商品の調達をさらに推進していく考えを広く内外に知らしめた。

 具体的な取り組みとして、水産物は絶滅が危惧されるものから持続可能な裏付けのあるものへシフトしている。06年より天然魚のMSC認証商品販売を開始したのを皮切りに、14年3月からは責任ある養殖により生産された水産物のASC認証*2商品を販売。15年6月には、天然まぐろ資源に依存しない完全養殖まぐろ「トップバリュ グリーンアイ奄美うまれ生本まぐろ」の販売を開始した。

 一方で、持続可能な基準のないカテゴリーについては、ステークホルダーに基準づくりに向けた働きかけを実施している。

*2 養殖が世界で引き起こす環境的・社会的な影響を軽減することを目的に、WWF(世界自然保護基金)とIDH(オランダの持続可能な貿易を推進する団体)の支援のもと、2010年に設立された水産養殖管理協議会(ASC)による認証

この項、終了。次回は12月19日公開予定