ストライプ石川康晴社長が見通す「アパレル業界の近未来」~市場構造とAIと海外~
AIで得た利益はECと東南アジアに投資!
──アパレル企業はAIで何を最適化していくのでしょうか。
石川 代表的な例を挙げるとすれば、「値引き」です。これは(AI活用による)ダイナミックプライシングによって大きく最適化できます。あとは発注量や、各店舗への納品などもAIによって最適化できることがわかってきました。
当たり前のことではありますが、最適在庫、最適値引き、最大粗利を実現しようと社内ではよく言っています。当社ではSDGs(持続可能な開発目標)の推進にも力を入れていますので、つくる量の最適化と廃棄の最小化は今後も徹底していきます。
──そうした最適化によって売上高はどうなっていくのでしょうか。
石川 売上自体は多少落ちます。ただ、それは“利益に貢献してなかった売上”です。在庫量が落ちると、値引きの頻度も減ります。今までは在庫が多かったため、何段階かに分けて値引きを実施していました。そしてその中には、売上高として計上されているものの損益計算書上では赤字になっている商品がありました。
全体から見れば、売上高の4~5%ほどでしょうか。言い換えれば、5%の売上高をとるために、赤字商品をつくっていたわけです。この部分がAIの在庫最適化によって削除されるので、売上高自体は落ちることになります。
ただ、同時に粗利益率が3~4%ほど改善されます。当社のような売上高1000億円規模の企業の粗利益率が3~4%上昇したとなれば、(業績に反映される)インパクトは大きいですよね。
──確保した利益はどのような分野に投資していきますか。
石川 先ほどキーワードに挙げた「EC」と「東南アジア」です。最近は自社ECを始めるアパレル企業が増えています。ですが、プラットフォーマーになろうというアパレル企業はまだいません。現在のECの年成長率は10~20%と言われており、一時期ほどの勢いはありませんが、今後も緩やかに伸び続けていくでしょう。ですので、この分野は当然やっていきます。
一方で、ダイナミックな伸びが期待できるのが「東南アジア」です。現状、日本のアパレル企業のほとんどが東南アジアに出ていません。当社は17年にベトナムのアパレル大手ネム(NEM)をグループ会社化し、ベトナム市場に進出しています。さらに19年には、ベトナムシューズメーカー大手のVASCARAもグループ会社化しました。両社合計の店舗数は200店舗超の規模にまで拡大しており、ベトナムのアパレル業界でシェア1位となっています。
この成功モデルがありますので、今後はフィリピンでもファッションブランドの買収を計画しており、事業を拡大していきたいと思っています。現在、売上高全体に占める海外比率は10%ほどですが、将来的には国内と海外の比率を逆転させるイメージでいます。
ストライプインターナショナル企業概要
本社 | 岡山県岡山市北区幸町2-8 |
本部 | 東京都中央区銀座4-12-15歌舞伎座タワー18F |
設立 | 1995年2月 |
売上高 | 1364億円(2018年度、グループ連結) |