ストライプ石川康晴社長が見通す「アパレル業界の近未来」~市場構造とAIと海外~

2019/11/19 05:57
ダイヤモンド・チェーンストア編集部
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「アース ミュージック&エコロジー」をはじめとした有力ブランドを展開する一方で、ファッションサブスクリプションサービスやホテル、飲食事業を手がけ、アパレル企業の枠を超えた「ファッションIT企業」として成長を続けるストライプインターナショナル(東京都)。世界的アパレル企業が相次いで経営破綻し、国内でも大手チェーンが大規模な店舗閉鎖計画を発表するなど業界全体に逆風が吹く中、石川康晴社長はアパレル業界の近未来を見通して、着々と布石を打っている。インタビュー前半である本稿では、業界の近未来の姿を予見してもらうとともに、アパレル企業が生き残るために必要なキーワード、「AI」「EC」、そして「東南アジア」についてその理由と戦略を解説してもらった。

聞き手=阿部幸治 構成=小野貴之

国内アパレルはジャイアントとDtoCの二極化へ

ストライプインターナショナル代表取締役社長兼CEO 石川康晴
いしかわ・やすはる
1970年生まれ。岡山県出身。京都大学大学院修了。94年に創業。現在30以上のブランドを展開し、グループ売上高は1300億円を超える。石川文化振興財団の理事長や岡山芸術交流の総合プロデューサーも務めている。

──現在の国内アパレル市場をどのように見ていますか。

石川  ユニクロ(ファーストリテイリング)のようなジャイアント企業以外は非常に厳しいフェーズに入ると見ています。今後は、このジャイアントの下に売上高数千億円規模の「準ジャイアント」が10社ほど続き、国内アパレル市場のほとんどを占めることになるでしょう。ですから、この10社の中に入らないといけません。

──上位集中が進むということですね。アパレル業界はほかの業態と比べて寡占化が進んでいない業界ですが、今後はどのような構造になっていくのでしょうか。

石川  ジャイアント、準ジャイアント10社以下は、DtoC(Direct to Consumer)市場になっていくと見ています。ファッションモデルやインフルエンサーと呼ばれるような人たちが、売上高数億円規模のブランドを1人で立ち上げるような時代がくると思います。

 Instagramで10万人のフォロワーがいる女の子がいるとします。服飾の専門学校で学んだといったバッググラウンドのない、“半分素人”のような子です。その彼女が束ねているフォロワーだけで、3億円ほどの売上がつくれてしまう時代になりつつあります。こうしたDtoCマーケットにおいては、ベンチャーのアパレル企業のような存在はもはや必要ないでしょう。インフルエンサーをプラットフォーマーとして束ねるIT企業が、100億円規模の売上高を稼ぐ時代になっていくと思います。

「AIバブル」は3年で終わる!

──アパレル各社は生き残るために変革をしていかなければなりません。

石川  3つのキーワードがあると思っています。「AI」「EC」、そして「東南アジア」です。最近は百貨店のアパレルにおいてもAIが導入されはじめています。ですが、在庫を持たない百貨店アパレルは需要予測をしようがないので、AIを入れても大きな効果は出せないでしょう。

 一方、当社のようにショッピングセンター(SC)内などに店舗を展開し、多くの在庫を抱えているアパレル企業は効果が期待できます。SKUと在庫が多いモデルほどAIの効果が出ると思います。この先3~4年間はAIによって粗利益を伸ばすアパレル企業が出てくるでしょう。

──アパレル業界に「AIバブル」が到来するということですか。

石川  AIバブルは線香花火のようなものだと思っています。苦戦続きのアパレル企業がAIによって一瞬だけ浮上する、最後のもがきです。

 というのも、AIは3年くらい経つと(対象を)最適化します。「最適化した先の最適化」においては、差はほとんど生まれません。ですので、AI バブルは3年で終わると考えているわけです。

 国内アパレルの生き残り策はAIしかないと思います。出店ができない、競争力のあるブランドもつくれないという中では、既存の事業にAIを無理やりねじこんでいく状況が続くでしょう。

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