[5日 ロイター] – ソフトバンクグループの1000億ドル規模の「ビジョン・ファンド」は、自動運転や医療、金融といったさまざまな分野で、不採算のスタートアップ企業に投資し、わずか2年余りで資本の大部分を使い尽くした。
経営難に陥った共有オフィス「ウィーワーク」運営会社の米ウィーカンパニーへの100億ドルの支援や、米配車大手ウーバー・テクノロジーズなど他の投資先の株価急落は、孫正義社長の2つ目の巨大ファンド設立に向けた取り組みに影を落としている。
ビジョン・ファンドの投資先とパフォーマンスの概要は以下のとおり。
*ウィーカンパニーに130億ドル超(ソフトバンクGと共同で)
*中国配車サービス大手の滴滴出行に118億ドル
*ウーバーに77億ドル
*東南アジアの配車サービス大手・グラブに30億ドル
*韓国の電子商取引企業・クーパンに30億ドル
(注釈:投資額は企業の当局への提出文書やロイター報道から)
*6月末時点で、同ファンドは83社に714億ドルを投資。投資収益は202億ドルで、6月末に投資家へ64億ドルを分配。
*ソフトバンクは同ファンドに205億ドルを拠出。同社の未実現投資収益は253億ドル、未分配マネジャーパフォーマンス手数料は32億ドル、実現収益は16億ドル。
ビジョンファンドの202億ドルの投資収益は大半が「紙の上」の利益で、上場した出資先5社のうち4社の株価が7─9月期に急落したことから、評価額への下押し圧力は増している。
5社はウーバー、ビジネス対話アプリの米スラック・テクノロジーズ、がん検査キット製造の米ガーダントヘルス、中国ネット専業保険の衆安在線財産保険、中国のオンライン医療サービス会社、平安健康医療科技。
一方、インドのネット通販大手・フリップカートと米半導体大手・エヌビディアの株式売却で実現した利益が特に大きかった。
ソフトバンクGの株価は同期に下落した。
*輸送&物流
ウーバー、滴滴出行、グラブ、ゼネラル・モーターズの自動運転部門クルーズ、米料理宅配ドアダッシュ、独自動車販売サイト「オート1」が主な投資先。
投資総額は283億ドル。ソフトバンクGが報告した6月末時点の評価額は330億ドル。
*最先端ハイテク
半導体デザインのアーム、自律移動型ロボットのブレイン、自動運転車向けカメラのライト、仮想シミュレーションのインプロバブルが主な投資先。
投資総額は105億ドルで、評価額は112億ドル。
*消費者向けハイテク
韓国のクーパン、インドネシアのネット通販・トコペディア、インドのホテル運営大手・OYO(オヨ)、インドのオンライン食料品小売りのグローファーズ、屋内農業の米プレンティ、犬の散歩代行サービスアプリを提供するワグが主な投資先。
投資総額は101億ドル、評価額は148億ドル。
*不動産
ウィーワーク、オンライン不動産のコンパスおよびオープンドア、建設のカテラが主な投資先。
投資総額は80億ドル、評価額は99億ドル。
*フィンテック
インドのQRコード決済アプリ「Paytm」、ネット融資のカバッジおよびオークノース、ネット保険を手掛ける中国の衆安およびインドのポリシーバザールが主な投資先。
投資総額は37億ドル、評価額は42億ドル。
*ヘルステック
中国の平安健康医療科技、米ガーダント、スイスの製薬ロイバント・サイエンシズが主な投資先。
投資総額は28億ドル、評価額は47億ドル。
*エンタープライズ
米スラック、データ管理のコヒシティ、地図サービスのマップボックスが主な投資先。
投資総額は27億ドル、評価額は41億ドル。