外国人スタッフの能力向上を促進させるLINE活用術!

神南文弥(じんなん ぶんや)
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このシリーズは、部下を育成していると信じ込みながら、結局、潰してしまう上司を具体的な事例をもとに紹介する。いずれも私が信用金庫に勤務していた頃や退職後に籍を置く税理士事務所で見聞きした事例だ。特定できないように一部を加工したことは、あらかじめ断っておきたい。事例の後にこうすれば解決できた」という教訓も取り上げた。今回は、私がかつてヒアリングをして、その単純明快な部下指導に強い刺激を受けた事例を紹介したい。

 

Photo by Chaay_Tee

第25回の舞台:ステーキチェーン店(8店舗)

(計240人、正社員40人、アルバイト200人)

 

口頭で注意しても、意図が伝わりにくいことがある

 4年前、私がヒアリングを兼ねて訪れた際に目にした光景だ。社長の中川(39歳)が、外国人の店員がテーブルにフォークを並べる姿を厨房でじっとみている。外国人が厨房に戻ると、1つずつ指摘する。

 「ねぇ、ミスがあったじゃない?俺、言ったよね?」

 「…」

 「こういう過ちがあったよね」

 「…」

 外国人たちは、すぐに答えられない。中川の言わんとしていることがわからないようだ。創業者であり、オーナーでもあり、不満があると感情をむき出しにしやすい。職場では、怖いものがない。

 「なんで、わかんないの?稼ぎたくて、日本に来たんじゃないの?」

 外国人は、黙ったままだ。日本語の意味がある程度わかったとしても、どのように受け答えをしていいのか、わからないのだろうか。

 それでも、ふてくされることなく、黙々と働く。中川は、その姿を「40∼50年前の日本人」と評する。39歳でありながら、なぜ、50年前のことがわかるのだろうと不思議に思いつつも、言わんとしていることは私なりにつかめた気がした。

 2015年時点でチェーン展開する3店舗で雇う外国人は約45人。ベトナム、フィリピン、インドネシア、スリランカ、インド、中国、韓国から来た留学生が大半を占めていた。その多くがアルバイト契約で、自らの意志で半年から2年で辞めていく。

 中川によると、勤務態度は「ほぼ全員が満点」なのだという。仕事への姿勢がよく、協調性もあり、チームプレーに徹するようだ。無断欠勤はもちろん、遅刻をする人はほとんどいないらしい。外国人どうしのつながりがあり、辞めていくときには新たな外国人まで紹介するという。

 中川は、ほめちぎる。

「彼らは今の日本人の、特に20代の5∼6倍は働く。熱気ムンムンだよ…」。

 

 あれから4年経った2019年秋現在、全店舗の店員(正社員、アルバイト)のうち、7割近くが外国人となった。この3年間で、中川は彼らへの指示の方法を変えた。特に単純作業などは、スマホ(スマートフォン)のLINEを通じて伝える。

「フォークはまっすぐに並べる」

「テーブルの上のコップはお客さんの右手側」

 たった1行で、簡潔に書いたメッセージを外国人たちに頻繁に送る。その際、あらかじめ撮影しておいた画像を添える場合がある。私がその場で見たのが、テーブルの上にフォークが置かれたものだった。

 この単純明快な指示が、功を奏したようだ。外国人にはわかりやすかったらしい。早いうちに、1つずつの仕事を確実に覚えていった。定着率はさらに上がり、お客さんからの評判もよくなり、業績はしだいに増えた。この時期から、店舗数を拡大させた。

 中川は、指示のコツを明かした。

 「外国人に曖昧な指示はダメ!ストレートに、単刀直入に言わなきゃ…。余計な言葉は不要。直接的に、簡潔に、具体的に…!」

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