ニトリホールディングス(以下、ニトリHD)は10月2日、2020年2月期第2四半期決算説明会を開催した。米中貿易摩擦やアマゾンの台頭といった世界情勢を踏まえたうえで、これから小売業にはどのようなことが求められるのか。またその中で、ニトリはどのような役割を果たすのか。似鳥昭雄会長が語った内容をまとめた。
アマゾン旋風で
寡占化が進む米国
アメリカでは、アマゾン旋風が吹き荒れている。アマゾンの売上高が約25兆円で、ウォルマートが約56兆円。ただ、伸び方が違う。アマゾンは年率30%で、毎年5~6兆円伸びている。10年もしないうちに、40~50兆円規模になるだろう。
そうなったときに、リアル店舗で、価格、品質、コーディネートが弱いところは淘汰され、寡占化していく。小さなブラックホールだったアマゾンがウォルマートに迫る。アマゾンはリアル店舗を買収してさらに拡大。それに対して、ウォルマートはネット企業を買収したり、グーグルと提携したりする。どちらが勝つのか非常に興味深い。
そのあおりを受けて、かつてトップだった企業が倒産・廃業に追い込まれている。ホームファニッシングのベッド・バス&ビヨンドというと、彗星のごとく成長し、売上、利益ともすごかった。しかし今年は赤字。びっくりした。
私は従業員を春に700人、秋に700人を連れて、一緒に米国視察に行っている。毎年様子が変わっていて、今はウォルマートとターゲットに寡占化されている。ターゲットはウォルマートよりもワンランク上の客層をねらってきた。ターゲットもブラックホールの1つになると思う。
専門店は厳しい。家電チェーンはベストバイの1社しかない。それも半分以上は売場の貸し出し。本屋も、スポーツ用品店も、ブランドショップもなくなってしまった。トイザらスもかつては優良企業だったがダメになった。衣料でもフォーエバー21が破産。アメリカの実店舗は、去年は5000店舗、今年は上半期だけで9000店舗なくなった。
これは寡占化によるもの。日本にも寡占化の時代が来る。業界そのものがなくなる、あっても1社。そのほかの企業は合併されるか、倒産するしかない。
コーディネートに
力を入れる
日本はまだまだ競争が遅れている。5年、10年遅れて、アメリカと同じような時代が来る。
日本はオーバーストア状態だから、景気が悪くなると一気に寡占化が進むだろう。
お客さまは何に集まるかというと、商品。商品の魅力は安さ、品質、機能、コーディネート。それがないと生き残っていけない。
日本の10年先は今のアメリカ。だから、アメリカを見に行って、10年先のことを着々と準備する。日本のショッピングセンターも将来、空きだらけになる。アメリカでは、タダでもいいから入ってくれと言われるテナントもある。
これは人類の経験法則。いちばんの先進国で起こったことが、次の先進国に10年遅れで起こり、さらに10年遅れでアジアの各国で起こる。川の流れのように、必ずそうなっている。
品質の良いものを安く、今までにない機能のものをつくっていく。われわれは今、2万4000SKUあるが、その半分は1年で変えている。変えるための条件は、品質、機能を改善させるか、価格を下げることだ。
あと、ニトリが力を入れるのはコーディネート。今、コーディネート(の売上高構成比)は40%。来年は60%、再来年は70%にする。
コーディネートがうまくいけば、うちは飛躍的に寡占化できると思う。安くする仕組みや、品質を良くするノウハウはすでにある。あとはコーディネートだけ。
商品部だけで600人いる。これは日本で一番多いはずだ。本部社員は2500人もいる。減らしたいと思っているが、商品を強くするには仕方ないと思っている。どんどん海外に行って、教育費、研究開発費を投入しないと未来はない。
10年、20年先のことをやるのが大事。来年、再来年を見ても仕方がない。つねに10年先を見て、投資をしていきたい。