今、食品スーパー業界中が熱視線を送る絶好調企業がある。東京都を中心に115店を展開するサミット(東京都/竹野浩樹社長)だ。特筆されるのは、激戦が繰り広げられる首都圏において客数を伸ばしている点だ。2019年3月期までの3年で既存店客数は8%増加。それにより既存店売上高は同10%も増加しているのである。なぜサミットにはお客が集まるのか――。
行動指針を明確化 自律型の組織へ
同社の快進撃は16年6月、親会社である住友商事出身の竹野浩樹氏の社長就任後から始まる。「小売が好き」と公言し、住友商事でも小売畑を歩んできた人物で、その竹野社長がかねてより温めてきた新しい経営施策を実践したことが、現在のサミットの大躍進につながっているのである。
では、具体的にどのようなことを行ったのか。
まず、自律的に考え行動できる、自律型組織への変革だ。
これを実現するべく竹野社長が導入したのが「成長ストーリー」だ。これは竹野社長が考案した独自のフレームワークで、①「集客策を進化させ続ける」、②「オリジナリティの発揮で様々なニーズに対応する」、③「ハイタッチな接客で期待を超えるサービスを提供する」、④「サミットファンになってもらう」の4つの要素で構成される。
これらを順に、繰り返し達成していけば、業績を向上させる好循環が生まれるということを示したもので、これにより従業員に今行うべきことを明確に伝え、行動の指針となるようにして、自発性を引き出していったのだ。
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成長ストーリーに沿って、次々と改革を実行!
ストーリーに沿って改革を実行
竹野社長はこの「成長ストーリー」に沿って、次々と新しい経営施策を実行していく。
まず、①「集客策を進化させ続ける」では、「総菜選挙」「紅白食合戦」といったお客を惹きつけるユニークな販促企画を月に1度のペースで実施。17年10月の創業祭では、特典内容を伏せて来店を促す“白紙チラシ”を配布し平日過去最高の売上記録を叩き出した。
②「オリジナリティの発揮で様々なニーズに対応する」では、業態の垣根を越えた競争が激化するなか食品スーパーが優位性を発揮できる生鮮総菜・半調理品を強化するべく17年4月から「大総菜プロジェクト」をスタート。部門を越えて連携し、それらの商品力を高めるとともに、簡便、即食、小容量ニーズへの対応を強めている。
③「ハイタッチな接客で期待を超えるサービスを提供する」では、高齢化や小商圏化が進むなか、心と心が通う“ハイタッチ”な接客が大きな来店動機を生み出すとして、接客を専任で行う「案内係」の導入店舗を拡大。お客が気軽に頼れる接客体制を敷くとともに、お客の要望に耳を傾け、さらなる商品・サービスの向上につなげている。
これら施策を実行した結果、実際に④「サミットファンになってもらう」が達成できたことは、サミットのここ3年の客数の伸長が証明していると言えよう。
このように「成長ストーリー」を実行する過程を経るなかで、従業員の意識改革も進んでいった。それにより、さらにストーリーの回転が加速するという好循環を生まれ、競争が激化するなかであってもサミットにお客が集まることにつながっている。
「改革の進捗はまだ2割」
大きな飛躍を遂げたサミットだが、驚くのは竹野社長が「改革の進捗度合はまだ2割ほど」と言及していることだ。具体的には、成功事例の共有、店舗網の拡大、人材獲得の強化などに力を入れることで、さらなる成長を実現させる考えだ。
サミットにとって現在の快進撃はまだ序章に過ぎない。次はどのような施策を打ち出してくるのか、今後も目が離せない。
竹野社長の改革の具体的な手法や、改革を軌道に乗せることができた要因などの詳細については「ダイヤモンド・チェーンストア」8月1日・15日合併号特集「サミットのすべて~『お客が集まる』組織と売場」で掲載中!
竹野社長のインタビューでは、JR山手線内側を侵攻する出店政策や、気になるM&A(合併・買収)についての考えなど、今後の成長戦略についても語られている。