「生鮮販売、ねらっている」 コスモス薬品横山社長が示唆した食品戦略の”大転換”
生鮮の集客力と破壊力は無視できず 食品販売戦略を大きく転換か?
そして横山社長は説明会の中でもう1つ、気になる発言をしている。これまで、他のフード&ドラッグ企業に比べて手を入れてこなかった生鮮食品に対してだ。
「生鮮の集客力の破壊力はやはりすごい。今のところノウハウはないが、ねらってはいる。よいパートナーが現れれば、(協業しながら)ノウハウを蓄積していきたい」(横山社長)
これまでコスモス薬品は基本的に、「生鮮はやらない」というスタンスをとってきた。前述のとおり同社は徹底的に標準化された店舗フォーマットの高速出店を成長の源泉としており、生鮮という新規カテゴリーに手を出すことは、そのフォーマットを一からつくりなおすことを意味する。コスモス薬品が貫いてきた経営戦略上、生鮮の導入は非現実的というわけである。
ただ今回、生鮮導入について「ねらっている」と明言したことで、今後コスモス薬品の食品販売戦略に変化が生じる可能性が出てきた。実は九州などの一部店舗ではすでに青果、精肉を扱う動きを見せており、その取り組み規模が将来的に拡大することが予想される。なお横山社長は生鮮導入に際してもM&A(合併・買収)は否定しており、コンセッショナリー(専門テナントの委託販売)での主に見据えているようだ。
この生鮮をめぐる戦略の変化の背景としては、前述のイオンウエルシア九州の存在だけでなく、すでに各地で競合しているクスリのアオキホールディングス(石川県)やGenky DrugStores(福井県)など、「生鮮強化型ドラッグストア」の台頭があるはずだ。彼らの「集客力」「破壊力」を間近にし、生鮮に対するスタンスを再考せざるを得ないという状況なのだろう。
もしコスモス薬品が生鮮に本腰を入れるとなれば、そのインパクトは計り知れない。九州から関東まで小商圏型の密な店舗網を有する同社の店で、生鮮を含めたワンストップショッピングの利便性が提供されるとなれば、同業のドラッグストアはもちろん、食品スーパーやディスカウントストア、コンビニエンスストアなどあらゆる業態が強大な影響を受けること必至だ。
もっとも、コスモス薬品がどのような道筋・時間軸で生鮮を強化していくのかは具体的には言及されていない。しかし少なくとも、「生鮮をねらっている」という横山社長の発言は、全国の食品小売関係者にとってあまりに示唆に富んだ一言であることだけは確かだろう。