好調の伊勢丹新宿本店 固定客拡大で見えてきた過去最高売上更新、3000億円突破のスゴイ戦略
カード会員を「一生のお得意さま」にする仕組み
――顧客の来店頻度のアップの次には、顧客化(流動客の固定客化)、LTVの最大化(前編参照)という狙いがあると思いますが、それをどのように実現するのか、道筋を教えてください。
栗原 伊勢丹に来てくださったお客さまには、今度は、伊勢丹の固定ファンになっていただきたいわけですね。そこで、識別顧客、すなわち、当社発行の「MIカード」の会員になっていただくのが、次のステップです。MIカード会員獲得のため、お客さまに対してポイント付与だけでなく、希少アイテムの限定・先行販売、行列に並ばなくてもいい「会員専用レジ」といった、さまざまなインセンティブをご用意しています。例えば、世界最高級のチョコレートを集めた「サロン・デュ・ショコラ」という人気の催事があるのですが、MIカード会員のお客さまは、先行して「内覧会」にお招きしました。お客さまからも「ゆっくり商品を見比べられる」などと好評で、通常の催事よりも客単価がアップしました。
――顧客をカード会員にして囲い込み、その次は会員のランクを上げて、LTVも引き上げる営業戦略ですね。
栗原 年間購入額が100万円以上の「ゴールド会員」のお客さまには、「カテゴリースペシャリスト」をつけてお買い物をサポートし、店内買い回りを促したり、会員限定の特別な招待催事を開催したり、関係性を深める施策を中心にランクアップにつなげます。年間購入金額が300万円以上の「プラチナ会員」のお得意さまには、専用ラウンジや無料駐車場、会員限定イベントといった特典をご用意し、最終的には「外商顧客」になっていただき、当店から外商部門に引き継ぎます。
――一方で、従業員に対しても、インセンティブはあるのでしょうか。
栗原 例えば、MIカード会員を増やした従業員は、人事評価でプラスします。部長級以上の管理職については、プロモーションなどの成果も対象になりますが毎月、40~50人を成績優秀者として表彰しています。