新中期経営計画に取り組むフジ「店、サービスを『くらし』に近づけたい」=フジ尾﨑英雄 社長

聞き手:千田 直哉 (株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア編集局 局長)
構成:森本 守人 (サテライトスコープ代表)
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都市型小型店にもチャレンジ

──現在、広域商圏(商圏人口7~10万人)を対象にしたSC(ショッピングセンター)の「フジグラン」、SM(商圏人口2~3万人)の「フジ」、衣料品を扱う「ザ・カジュアル」の3業態を展開しています。今後の店舗政策について教えてください。

尾﨑 大型の「フジグラン」は、将来のマーケット状況を考えれば積極的に出せる業態ではありません。

 今後は、小型のSMを中心に年3店のペースで店舗網を拡大していきたい。現在、10カ所ほどの候補地があり、準備が整い次第、出店していきます。出店先は、足元商圏が豊かな都市部を想定しています。当社のプロトタイプの売場面積は520~530坪の店舗を考えていますが、都市部では300坪を基準として、400坪~250坪など複数のパターンを試しながら、適正なスタイルを確立します。

──他方、既存店舗についてはいかに考えていますか。

尾﨑 時流に合わなくなった古く、小さい店も多く、順次、建て替えを進めます。昨年の東日本大震災を考えると、われわれが展開する中四国エリアでも南海地震や東南海地震の発生に備える必要があります。建て替えを機に、店の機能も新しくしていきます。

 昨春にリプレースした「フジ内子店」(愛媛県内子町)がひとつの好例になります。もとは84年オープンと古く、敷地面積も狭いなどの条件を考慮し、200mほど離れた場所に新築移転しました。SMに加え、衣料品の「ザ・カジュアル」も併設、さらにクルマでの来店がしやすいように214台の駐車場も設置しました。このように以前の施設では地域ニーズに応えられなかった店については、移転も視野にリニューアルしていきます。

 また買物が不便なエリア、さらに買物にでかけられないような人に対しても、対策を講じていきます。すでにネットスーパーの「おまかせくん」や電話での注文が可能な「おまかせTELくん」は実施しています。

 今後、移動店舗や循環バス、御用聞きサービスの充実など、あらゆる方法を検討していきます。

 「くらし」に密着しながら店舗を整備すれば、人々の交流の場にもなる。つまり近年、失われつつある地域コミュニティを再生する場を提供したいと考えています。

お客の声へ真摯に応える

──さて、新中期経営計画では、重点施策のひとつに「ローコストの徹底」を掲げています。

尾﨑 計画を成功させるには、競争力強化のキーとなる、ローコストへの取り組みは不可欠です。社内には業務改善推進部という部署があり、ここで仕事の大きな流れや仕組みを考え、それらの成功事例を水平展開していきます。

 まして昨年は、原子力発電所の停止に伴って電力が不足、社会的な要請として節電への関心度が高まったこともあり、社内でもローコストへの志向が強くなったように思います。

 実際、経営のローコスト化は進んでいます。売上高に占める販売管理費の比率は10年2月期は26.4%でしたが、12年2月期は23.9%、さらにこの中期経営計画を通じ22%台を見込んでいます。

 ただし、ローコストでもお客さまから見える部分までコスト削減をすると、来店者の満足度は低くなります。省エネといっても、買物に支障が出るほど暗くするのは本末転倒。収益を改善するため、買物環境を悪くしてはいけません。そして、ここには留意するようにと従業員に対して口を酸っぱくして言っています。

──新中期経営計画の先には会社設立50周年が見えています。

尾﨑 そうですね。そこに向けて、フジという企業ブランドを前面に押しだし、企業グループ全体で、中四国の「くらし」に密着していく考えです。そのためには、お客さまの声にしっかりと応えることが必要だとあらためて認識しています。

 たとえば、これまで、お客さま、マーケットの声に真摯に対峙してきただろうかと自問すると、十分ではないことも多々あるように思います。自社のスタイルを正当化し、押しつけていた部分もあるのではないかとさえ感じることもあります。

 たとえば、「あいびきミンチに使われている肉の種類と比率を表示して欲しい」と言われた店長がいます。しかし一般に、表示義務がないとの理由で対応しなかったということがありました。けれどもそれがお客さまの要望であるなら、記載してもいいだろうと私は思うのです。ちょっとしたことですが、こちらの都合で進める仕事のやり方をあらため、要望に応えるべきなのです。

 激変する経営環境の中でもお客さまから支持される企業になれるよう、努力していく所存です。

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聞き手

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

構成

森本 守人 / サテライトスコープ代表

 京都市出身。大手食品メーカーの営業マンとして社会人デビューを果たした後、パン職人、ミュージシャン、会社役員などを経てフリーの文筆家となる。「競争力を生む戦略、組織」をテーマに、流通、製造など、おもにビジネス分野を取材。文筆業以外では政府公認カメラマンとしてゴルバチョフ氏を撮影する。サテライトスコープ代表。「当コーナーは、京都の魅力を体験型レポートで発信します」。

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