最大の経営課題は人材育成!持株会社移行で事業展開を機動的に=フレッセイHD植木威行社長
──プロフェッショナルな人材を適材適所に配置するということですね。
植木 そのとおりです。
たとえば、企画やIT部門の業務は、業界・業種を問わず、求められる能力、資質はほぼ一緒です。店舗開発部門においても、物件の選定から、ショッピングセンターをしっかりと管理運営できる能力は、小売業界だけに限らず、さまざまな業界・業種で求められると考えています。これから先、食品小売市場は業態の垣根を超えた競争が激しくなりますので、従来のような方法でゼネラリストを育成するだけでは競争に勝つことはできないと考えました。
一つひとつのセクションでプロフェッショナルを育てるためには、その人材に求める能力、姿を明らかにする必要があります。ある分野に特化した能力を持っている人材は、十分そのセクションで活躍できるでしょう。
そのような人材を私は「星型人間」と呼んでいます。コミュニケーション力は低いけれども、ある分野においては右に出る人間がいないといった「星型人間」でも、しっかりと活躍できる仕組みや評価制度をつくってあげれば、会社の中で大きな力を発揮できます。持株会社化でそういった仕組みをつくろうと考えました。
──SM事業会社のフレッセイはどのような人材を求めていますか。
植木 店舗運営に求める人材は、とにかく接客業が大好きで、お客さまがどういったことを求めているのかを常に考えているような人材です。
持株会社とSM事業会社では、求める人材像がそもそも異なり、そこを分けて考えていないとプロフェッショナルは育てられません。制度も教育の仕方も分けて考えなくてはならないのです。持株会社への移行で、そういった制度、仕組みに則って事業を展開していく土台ができたと自負しています。
新フォーマット「クラシーズ」が好調
──11年は新フォーマットの開発にもチャレンジしています。
植木 はい。11年11月25日に群馬県伊勢崎市へ開業した近隣型ショッピングセンター「フレッセイ連取(つなとり)モール」の核店舗、「クラシーズ連取店」がそれです。
当社は高級SM「クラシード若宮店」(群馬県前橋市)を04年に開業しています。しかし広域からの集客を図る高級SM業態は店数を多く増やすことができません。群馬県内に4?5店舗を展開するのがやっとでしょう。
だから「クラシード若宮店」をモデルに、「品質」と「価格」を両立させた、多店舗展開できるフォーマットとして「クラシーズ」を開発したのです。多店舗展開のモデルとして「S」をつけて、複数形の屋号にしています。
売場面積620坪ほどの連取店は、生鮮特化型のSMであり、「魚屋の惣菜」や、鮮魚や精肉の素材を使用したサラダをあつめた「旬鮮サラダコーナー」などの即食商品も充実させています。
「品質」については、とくに鮮魚に力を入れています。当社は160年以上前に創業した鮮魚専門店が前身ですので水産部門が当社の看板なのです。「海なし県」である群馬県の多くのお客さまにおいしい魚を食べて欲しいという創業時からの思いがありますので、品揃えと鮮度にはこだわっています。
もう1つのコンセプトである「価格」は、グロサリーについて地域いちばんの「価格」にこだわる必要はないと割り切っています。ただし、お客さまが許容できる価格差であるべきだと考え、日常ふだんの生活に必要なコモディティアイテムについては、地域でいちばん低く売価を設定する競合店価格の5%以内の範囲にすることを1つの基準にしています。「価格が妥当である」という評価をお客さまからいただけることが大事だと考えています。