SMは着実に地域シェアを拡大することでしか勝ち残れない=アークス 横山清 社長

聞き手:千田 直哉 (株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア編集局 局長)
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 「八ヶ岳連峰経営」と同時に、昨年から「センチペイド・オペレーション」という言葉を使い始めました。センチペイド(centi-pede)とは「ムカデ」のことです。ムカデは「後退しない」「(客)足が多い」縁起物としても古来扱われます。協業の理念である「異体同心」を体現したような生き物でもあります。どのようにひっくり返してみてもすぐ元の状態に戻るし、たくさんある足も一糸乱れず動きます。戦闘的で、かつ、戦略的な意味を込めて「センチペイド・オペレーション」と名付けました。

 「異体同心」とは、私がかねてから述べている「創発現象」を惹起するベースになります。「創発現象」は、一つひとつの小さな行動や動きが相互に影響し合って、クリティカル・マス(臨界点)に達したとき、予想を超えた構造変化や創造が誘発されることです。

 逆に、「一体同心」になってしまうと、すべてが同質化してしまい、「創発現象」は起きにくくなります。

 「創発現象」とはある程度の「マス=塊」がなければ起きないと考えています。私はクリティカル・マスという言葉を使用しています。ある臨界点を突破して爆発する。これは爆発しただけで終わりではなく、大きなエネルギーを放ちながらどんどん状況が変わっていく。

 企業経営に理想形はありませんが、「創発現象」を絶えず意識しながら、外見はバラバラの企業群が混在しているようであって、後々に結局はすべての企業が一体であったかと思われるような企業経営をめざしています。

──これまでのグループ経営の中で、具体的な「創発現象」としてどのようなものが出てきましたか。

横山 03年にユニークショップつしまからSM事業を譲り受け、04年に子会社として新たなスタートを切った道南ラルズは当初、売上高160億円ほどで、債務超過に陥っていました。人材流出も相次ぎ、同業他社からは「有能な人が残っていない」とさえ言われました。それが今では売上高210億円、6億~7億円の利益を計上するまでになりました。グループ7社のうち、最も元気のいい企業の1つになっています。アークスグループから従業員を出向させ、道南ラルズの社員と一丸となってさまざま試行錯誤する中で、どんどん何かが芽生えていったと言いましょうか、企業そのものが大きく変わっていったのです。パートナーさんの資格検定試験の合格者数は、業界トップクラスまでになっています。

 これは1つの「創発現象」だととらえています。

 函館市のマーケットが上向き、劇的に変わったということはありませんので、企業内に創発が起こった結果だと自負しています。

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聞き手

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

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