デジタル×サステナビリティを志向するファストファッションの雄、H&M のDX 戦略
コロナ禍を機にデジタル化が急加速
1947年に北欧・スウェーデンで創業し、今やファストファッションの世界的大手として市場で存在感を示すH&Mグループ(以下、H&M)。現在の展開国数は75に及び、ファストファッションのプレーヤーとしては、「ZARA」を運営するスペインのインディテックス(Inditex)に次ぐ規模の店舗網をグローバルで構築するまでになった。
H&Mの店舗数は過去10年間、右肩上がりの成長を遂げてきた。2010年時点では約2200だった店舗数は、コロナ前の19年には5000店以上に達していた。コロナ前においては、実店舗網の拡大がH&Mにおける主要な成長ドライバーとして位置付けられていたことがうかがえる。
しかし、コロナの影響を受けた20年を潮目に、店舗数は減少傾向に転じる。21年の総店舗数は、前年から約200店舗の減少(全店舗数に対して約4%の減少)となった。
これは、コロナにより加速した消費行動のオンラインシフトへ対応した結果であり、リアル店舗事業は大型店に集約しOMO(オンラインとオフラインの融合)とEC化を推進するという戦略である。店舗数を減らしつつも、店舗あたり売上高とEC売上高を高めることで成長を志向するものだ。同様の動きはインディテックスでもみられ、今後も店舗網の整理は継続的に行われると想定される。
実際に、店舗数が減少に転じるとともに、H&MにおけるEC売上高比率は右肩上がりで伸長している。18年時点で21%だったEC売上高比率は、21年には32%となっており、過去3年間で10%以上の成長を遂げている。先述の店舗数縮小の事実を合わせると、まさにH&Mの成長ドライバーが、実店舗販売からEC販売へシフトしたといえよう。
ただし、H&MがEC事業を展開している国は、21年度時点では54カ国にとどまる。18年度の47カ国から3年間で7カ国を追加したものの、75カ国に実店舗を展開していることを考えれば、ECの拡大余地はまだまだ多く残存しているといえる。すでに足元では順調に推移するEC売上高比率だが、今後もさらなる伸長が見込まれる。
先進的なデジタル戦略と顧客体験向上の取り組み
H&Mはコロナ前からデジタル化の推進に極めて積極的であった。18年にH&Mがリリースしたモバイルアプリでは、その後多くの消費財・小売企業が後追いすることとなる先進的な機能・サービスがすでに複数搭載されていた。
例えば、H&Mの店頭に並ぶ商品に付随しているQRコードを読み込めば、