脱スーツではなく、スーツ注力で黒字化!青山商事、業績回復引っ張るオーダースーツ戦略とは

堀尾大悟
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既存店舗を中心としたオーダースーツ戦略が奏功

SHITATE
既存店内に設置される「SHITATE」コーナー

 スーツを中心としたビジネスウェアでは、近年のワークスタイルの変化を見すえて紳士服業界各社が独自色を競い合っている。「ビジカジ」(ビジネスカジュアル)のウェイトを高める企業、健康・スポーツ色を打ち出す企業とさまざまだ。その中で、青山商事が「最も力を入れている」(長谷部氏)と言うのが「オーダースーツ」だ。

 「コロナ禍で、対面での打合せや商談が貴重な機会になり『対面だからこそ特別な一着を身につけたい』というニーズが高まっている」(長谷部氏)

 もともと、消費者のニーズや嗜好の多様化を背景に、オーダースーツブームはコロナ前の2010年頃から高まりを見せていた。その火付け役は、タンゴヤが2009年に第1号店を出店した「Global Style」だ。「高価で手が届かない」「古くさい」イメージのあったオーダースーツをリーズナブルな価格で体験できるとあって、業界に新風を吹き込んだ。

 そのブームに紳士服業界の各社も追随し、「低価格・短納期」を掲げるオーダースーツサービスを続々と展開していった。コナカの「DIFFERENCE」などがその一例だ。

 青山商事もその波に乗り、2016年にはオーダースーツブランド「UNIVERSAL LANGUAGE MEASURES」のサービスを開始。次いで、201910月には低価格のエントリーライン「クオリティオーダー・SHITATE(シタテ)」をリリースした。

 本体価格31,900円からの低価格でオーダースーツを体験できるSHITATEの出店にあたって、同社ではあえて独立の店舗を構えず、「洋服の青山」や「THE SUIT COMPANY」など既存店舗の中にインショップ形式で導入する戦略をとった。ねらいとしたのは、「オーダー目的ではないスーツ需要」の獲得だ。

 「低価格とはいえ、それでもオーダースーツは多くの人にとってまだ敷居が高いイメージがある。お客さまがいつもの店にスーツを買いに来た流れで、自然にオーダースーツ売り場にご案内できるような導線を意識した」(長谷部氏)

 この戦略が奏功し、「SHITATE」はオーダーの潜在ニーズの取り込みに成功。2019年度の103店舗から、2021年度は296店舗へと、導入店舗を徐々に拡大している。

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