ファストリ中間決算は増収増益で着地、柳井正氏は説明会で何を語ったのか

棚橋 慶次
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通期でも増収増益を予想! 柳井氏が決算説明会で語ったこと

 2022年8月期通期の業績予想では、売上収益が対前期比3.1%増の2兆2000億円、営業利益が同8.4%増の2700億円、親会社の所有者に帰属する当期利益が同11.9%増の1900億円を見込み。売上収益こそ18年2月期の2兆2905億円に届かないものの、営業利益と当期利益は過去最高を更新する見通しだ。

 決算説明会では、柳井正会長兼社長が同社の将来展望を語っている。柳井氏の話は企業の存在意義や世界平和にまでおよび、同氏のスケールの大きさと熱い想いがひしひしと伝わってきた。

 まず、アフターコロナを見据えた成長加速と意欲的出店の再スタートについて。広島市に「ユニーク・クロージング・ウェアハウス(ユニクロ)」の第1号店をオープンさせたのが1984年のこと。それから30年足らずで同社の売上は1兆円を超えた。アフターコロナを見据え、ユニクロはさらなる成長を模索する構えだが、国内市場はすでに成熟状態にあり、本気で成長をめざすなら今まで以上に海外展開に注力せざるを得ない。

今後は出店にアクセル

 コロナ禍を背景に抑えてきたこれまでは抑制傾向にあった出店にもドライブをかける考えだ。4月も、弧を描く街並みで知られるロンドンのリージェントストーリーに、セオリーと共同で店舗を立ち上げる。もちろん出店加速だけでなく、足元を支える人材育成にも力を入れる。

 同社は、常に新しい世代の育成に心を配ってきた。すでに次世代に引き継ぐ準備はあらかた整っているようだ。

 ただし、業績だけが伸びればよいというものではない。柳井氏は、「企業は世の中にとってよいことをする存在でなければいけない」と訴える。ファーストリテイリングは世界27カ国に進出、店舗数は3500店舗以上に達し、多くのサプライヤーが係わっている。多くのパートナーとの共存共栄をめざすと同時に、社会にも貢献していかなければいけない。

 柳井氏は「取り組みはまだ十分とはいえない」と認める。今後の行動に注目したい。

「あらゆる戦争に強く反対する」

 柳井氏はロシアのウクライナ侵略にも触れ、「人権を踏みにじり生活を脅かす侵攻を非難する」と強い言葉で非難した。企業経営者としては、踏み込んだ発言と言えよう。同社は2010年よりロシア事業をスタート、現在は50店舗を展開していたが、今回の事件を受けて3月21日に事業を停止した。

 さらに注目すべきは、「平和実現のために具体的な行動をとる、企業としての役割を積極的に果たしていく」とコミットメントした点だ。「対立構造を解消し世界が協調できる、そのために企業ができることはたくさんある」と柳井氏は考える。

 同社は、平和社会実現に向けて寄付活動など最大限のサポートを続けている。もちろん同社のビジネス自体が平和産業であり、機能的で良質な商品の供給を通じて人々に快適な生活をもたらすと同時に、ビジネスを通じて経済成長や雇用確保に貢献するのだ。

 ユニクロのSPA(製造小売業)に支えられた圧倒的低コストと常識にとらわれない商品開発は、年齢・所得などあらゆる階層を超えて消費者の支持を集めた。ユニクロは、ファッション業界を大きく変えただけでなく、私たちの生活スタイルを一変させた。

 「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」

 ファーストリテイリングがもたらす未来に期待したい。

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