下着メーカーならではの気づき!「ワコールの靴」が就活生に人気のワケ
しかし売上が伸びない…靴事業撤退をほのめかされ
ところが、開発を始めた当初は雲行きが怪しかったという。「フィジオ」という疲れにくい快適さをテーマにした靴を開発するも、売れ行きは思わしくなかった。「正しい研究のもと良い商品を作っているのに、社内で浸透させるのが難しかったようだ」(細川氏)。消費者はもとより、下着の専業メーカーが靴という異業種に“手を出す”のかと、社内の賛同すらなかなか得られなかった。靴事業撤退の危機に陥ったこともあったという。
そんな中、女性のビジネスパンプスに舵を切ることになったきっかけは、全国で下着を売る女性販売員の声だった。パンプスを履いて1日中立ち仕事をすることから、「靴と足が合っていないと辛いし、足に弊害が出る」との懸念が寄せられていた。「女性の美を追求する会社の販売員が、足が痛いと苦しんでいる。会社として応援できないだろうかと考えたのがサクセスウォーク開発のスタート」(同)
ワコールが2019年に行った「働く女性の靴(パンプス)に関する意識調査」によると、悩みの第1位は「靴擦れをした」(41.3%)、第2位は「サイズが合わず、かかとがパカパカしていた」(40.3%)で、見た目のファッション性にこだわるあまり、履きやすさや快適性を犠牲にしている女性が多いという実情がわかっている。「弊社としては、快適さだけでなく見た目の美しさとも両立させたい。下着の事業で培ってきた“ジャストフィット”のコンセプトを靴にも応用し、働く女性の靴の悩みを解消したいと考えた」(同)
サクセスウォークは、単にジャストフィットする靴を提供するだけではなく、人の体の「形」と「動き」を研究する人間工学に基づいた構造の開発を行っている。こだわりは「ヒールの位置」「ヒールの角度」「インソール」の3点。疲れにくくするためにヒールの位置を変えて体重のかかり方を変え、歩きやすさを向上させるためヒールの角度を工夫した。また、「美楽る(みらくる)パッド(3Dインソール)」でフィット感を向上させ足の前滑りを軽減させた。これらは、ワコールが培ってきた知恵と技術のたまものだ。