串カツを「食文化」に 逆境をチャンスに変える串カツ田中の「店舗に縛られない流通戦略」

油浅 健一
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子供を重要顧客と考える理由

串カツ田中は子供向けサービスを強化している
串カツ田中は子供向けサービスを強化している

 居酒屋業態でありながら禁煙化していることも、串カツを誰もが楽しめる食とすることを見据えるからにほかならない。子供が大人になったとき、店舗に帰ってくれば、「外せない食」となった証。そうなれば、「串カツ」は飲食業界で圧倒的な強さを持つことになる。だからこそいま、子供も重要顧客と捉え、来店しやすい環境づくりを優先している。

 コロナ禍における対応策ながら、テイクアウト・デリバリーも積極的に展開している。すでに売上高に占める割合が、営業再開後も10%程度を維持していることから、自宅での串カツもかなり定着しつつある。

 21年3月には串カツの衣を糖質40%オフにリニューアル。揚げ物である串カツは、気軽に口にするにはどうしても罪悪感が伴う。B級グルメに留まるなら現状でも問題はないが、誰もが口にすることをめざすうえでは、ネックとなりかねない。そこで4年もの歳月をかけ、おいしさはそのままで糖質40%オフ、食物繊維5倍、タンパク質1.4倍に改良した。

 肉や野菜を油で揚げて串に刺すだけだと思われがちな串カツだが、同社の串カツ愛は半端ではない。門外不出の秘伝レシピから始まった「串カツ田中」は、提供の仕方から食材に至るまで常に微妙に進化しながら、国民食になるべく磨き上げられている。

時代の変化に順応することが生命線

 この辺りのこだわりは同社の経営方針とも無関係でないだろう。

 「どんな時代においても必要とされる会社・組織・人材になる」――。そう掲げる同社は「時代や環境の変化は、早く、企業や組織、人に求められるものも時代時代で変化していきます。我々は、時代の変化に適切に順応し、どんな時代においても必要とされる 会社・組織・人材になることを目指します」(同社ホームページ)として現状に満足せず進化を続けている。

 「二度付け禁止」は串カツを楽しむ上での独特のルール。コロナ感染対策としてではあるものの、ソースのつけ方・提供方法を変更したことも、「時代の変化に順応する」の有言実行といえるだろう 。

 串カツだけで東証一部上場まで果たした同社。その翌年には子会社で鳥と卵の専門店「鳥玉」を展開。これも時代の変化に合わせた施策といえるだろう。21年11月期では20年12月に2号店の「ららぽーと柏の葉店」を、21年3月に3号店の「イオンモール新利府店」をオープンし、着々と拡大。先行き不透明な経済状況の中でしっかりと二の矢を打っている。

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