第286回 日本型スーパーストアが高価格帯の衣料品の取り扱いをやめられない本質的な理由

樽谷 哲也 (ノンフィクションライター)
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評伝 渥美 俊一(ペガサスクラブ主宰日本リテイリングセンター チーフ・コンサルタント)

「総合化」と「多角化」

 本来は食品専業のフォーマットであるスーパーマーケットについて、渥美俊一は「非食品の取り扱いは全体の2割以下であるべきだ」、「その2割も、日用生活用品であって衣料品ではいけない」と、日本型スーパーストアの成長期から説いていた。

 食品店や衣料品店からチェーン店へと発展していった日本の小売店の多くは、やがて食品主体の別フォーマットとなり、「総合店」あるいは「総合化」との名目で、しだいに非食品の取り扱いを増やしていった。かつてのイトーヨーカ堂やジャスコ(現・イオン)、ユニー、イズミヤなど、ペガサスクラブの主要な会員企業も例外ではなかった。欧米のGMSの模倣(もほう)のようでいて、似て非なるフォーマットであることから、日本型スーパーストアという定義は生まれていき、やがて全盛期を迎える。その傾向に早くから警鐘を鳴らしていたのが渥美であった。

 ありし日の渥美を懐かしく思い出す。「総合化」や「多角化」といった語句を安易に持ち出す経営者に対し、その批判の舌鋒(ぜっぽう)は容赦がなかったことを。ここぞとばかりにマシンガンのごとく早口でまくし立てるのであった。

 商品構成をどのように厳密に決め、徹底してそろえていくかは、渥美にいわせれば「完全なドミナントエリアをいかにつくるかという作戦につながり」、また「物流補給網に

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記事執筆者

樽谷 哲也 / ノンフィクションライター

1967年、東京都生まれ。千葉商科大学卒業。雑誌編集者を経て、98年からフリーランスに。渥美俊一とJRC、流通企業と経営者、周辺の人物への取材は10年以上に及ぶ。「人間 渥美俊一」を渾身の筆で描く。

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