「らしさ」で支持を集めてきた東急ハンズ 知られざる誕生秘話と未来へ向けた新たな展開とは

棚橋 慶次
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変わらない接客と変化する出店戦略

 ところで、ハンズの圧倒的な品ぞろえはSKU数を比べると一目瞭然だ。一般的な郊外のHCの品揃えは5~6万SKU程度のなか、ハンズは小規模店舗でも3万SKU、最大の売場面積を誇る新宿店ではなんと20万SKUにも達する。だからこそ、「ハンズに行けば困ったときもなんとかなる」「他にはない商品を見ているだけで飽きない」と顧客にいわしめることができるのだ。

 もちろん、商品をただ売るだけでは芸がない。本当に顧客にあった商品を探し出し、使い方をきめ細かく説明することができるのもハンズの強みだ。このハンズの強みのひとつでもある行き届いた接客は、当初集まったスタッフ達が「商品のプロ」であったというところに源流がある。

 たとえば自宅の水栓が壊れて困っているお客が来店した場合、通常の店なら「見てみないとわからない」「現物を持ってきてもらわないとわからない」などといわれそうなものだが、ハンズの場合は一味異なる。事細かにお客からヒアリングを行い、商品知識を駆使して適した水栓タイプを割り出す。水道に関する詳しい知識に加え、ていねいに説明し情報をお客から聞き出すコミュニケーションスキルを兼ね備えた接客が、ハンズの大きな武器だ。

 一方で出店戦略は、時代の流れに応じて変化を見せつつある。現在、直営39店舗、フランチャイズ9店舗、海外15店舗の計63店舗を展開(2021年11月末現在)。かつては多フロアの一棟店舗が主流だったが、最近の出店はほぼ全部が駅ビルやショッピングモール内への1フロア構成での出店だ。旧来の社有物件は軒並み老朽化が進んでいる一方で、近年は「男性客を滞在させるコンテンツ」としてショッピングモールなどからの引き合いが強まっているという。家族で訪れても父親だけが所在なくベンチに座り込む…そんな光景がモールではよく見られるが、そんな男性客にも目的を持って「行きたい」と思ってもらえるモールづくりをめざす側としては、ハンズは魅力的なテナントになっているようだ。

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