EMS機器の「胡散臭さ」払拭!SIXPADを大ヒットに導いたMTGのマーケティング戦略とは

堀尾大悟
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「ラクして痩せる」健康機器への不信感

周波数
周波数20ヘルツと他の周波数の違いを示す検証データ

 2010年頃の健康機器市場では、2000年代に起こった「第一次EMSブーム」が終焉を迎え、EMS機器に対する消費者の不信感が高まっていた。

 「『EMS10キロ減量!』『今日から巻くだけダイエット!』という触れ込みで、海外製のEMS健康機器がテレビショッピングなどで出回っていました。しかし、その多くは機能面も粗悪な代物で、結果として多くの消費者を裏切る形になってしまい、『EMS=効果がない=胡散くさい』のレッテルを貼られてしまったのです」(熊崎氏)

 それでも、EMS技術は医療・リハビリ分野においては広く普及している。その効果についてのエビデンスを示すことができれば消費者の信頼を回復できるはずだ——そう判断したMTGは、2014年頃から本格的にEMS技術を採用した新たなトレーニングギアの開発に乗り出す。代表の松下剛氏からは「本物であること」を追求するよう、開発チームにミッションが課された。

 EMSに関するさまざまな研究論文を読みあさる中で、開発チームはあるキーパーソンの存在に目を留める。EMS研究の世界的権威、京都大学名誉教授の森谷敏夫氏だ。「本物」のEMS機器を実現するためには、森谷教授の知見が不可欠だと判断し、共同開発を打診する。しかし、「EMS=胡散くさい」というネガティブイメージが浸透してしまっている状況で、森谷教授が簡単に首を縦に振ってくれるはずもなかった。「『君たちがEMSの悪いイメージを作ったんだろう』と門前払いされてしまう始末でした」(熊崎氏)

 それでも諦めきれず、山のような研究データを持ち込み、森谷教授のもとへ何度もアタック。「本物」のEMS機器を開発しようとする姿勢を訴え続け、ようやく共同開発の承諾を得ることができた。

 大きな後ろ盾を得た開発チームは、さらにEMS技術の研究を進める。森谷教授の研究によって、最も筋肥大効果が得られるのは周波数が「20ヘルツ」の周波数であることが立証されていた。しかし、低周波の刺激は高周波に比べて痛みが大きい上に、多くの電気刺激を与える高周波のほうが消費者には「効いている」印象を与えやすい。ゆえに、50ヘルツ、100ヘルツなど高周波をうたうEMS機器が必然的に多く出回ることになったのだが、このことが「EMS=効果がない=胡散くさい」のレッテルを流布する元凶だったのだ。

 森谷教授との共同開発である以上、20ヘルツの周波数は絶対条件。何百回もの実験と検証を繰り返した末に、SIXPAD独自で痛みを解決した20ヘルツの周波数の実現に成功した。

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