11月15日、米国・サンフランシスコ発で、Retail as aService(サービスとしての小売:RaaS)のパイオニアともいわれる「b8ta(ベータ)」の国内3号店が、東京・渋谷にオープンした。より進化した体験型ストアを見据えた「実証実験店舗b8ta 1.5」と位置づける店舗で、1・2号店や本国・米国の店舗にもない試みに挑戦している。
稼働式什器を採用し、イベント開催にも対応
今回開店した「b8ta Tokyo-Shibuya」(以下、渋谷店)は、JR各線「渋谷」駅から徒歩1分の宮益坂と明治通りの交差点沿いに立地。2020年8月、東京・有楽町と新宿に同時オープンした1・2号店同様に、人通りの多い抜群の場所に出店している。売場面積は約243㎡で、オープン時は扱いの多いカテゴリー順に、食品・飲料、化粧品・リラクゼーション、ガジェット製品、ゲーム・音楽機器など約60品目を展示。うち半分は店頭で購入も可能だ。
「b8ta」は「売らない店」とも呼ばれる。その事業モデルは、都内一等地に出店して売場を区画で分け、定額で商品を展示できるスペースを提供。接客スタッフが製品を売り込むのではなく、出品企業の代わりに魅力を説明し、商品と消費者との“出会い”を創出する。同時に店内設置カメラや接客スタッフのヒアリングにより、来店者の店内行動データや商品へのフィードバックも出品企業に提供するというもので、新たな小売業のかたちとして耳目を集めている。
実際、新型コロナウイルス感染拡大下での日本進出となったが、既存2店舗の累計来場者数は45万人、「インプレッション」と呼ぶ消費者と商品との出会いを創出した数については計1150万回を突破し、開業当初の目標を達成している。
3号店についても、東京・渋谷は20代前半から30代後半の「ミレニアル世代」が集まる場所であり、この世代へのアプローチをねらう企業を中心にすでに多くの出品希望があるという。
渋谷店で注目されるのは、「実証実験店舗b8ta 1.5」を掲げ、1・2号店にはない新しい試みを実践している点だ。
まず、新たにカフェスペースを設置するとともに、食品カテゴリーの商品を充実させた。試食・試飲を含めて五感に訴える体験を提供するのがねらいで、これは本国・米国の「b8ta」にもない取り組みだ。常時9品目、イベント時には計14品目の食品カテゴリーの商品を扱う。取材時はヴィーガン向けの餃子や、希少性の高いホップを使ったこだわりのビール、プロテインバーなど、新機軸のユニークな商品が並んでいた。
また渋谷店では、商品陳列什器を可動式にして、店内のレイアウトを柔軟に変更できるようにしているのも特徴だ。これにより、スペースを有効活用してイベントも開催できるようにするほか、大型の商品展示も可能にしている。
「メディア」としての店舗価値を高める
もう1つ特筆したい点が、独自のスマホアプリを活用したデータ取得にも挑戦している点だ。渋谷店ではすべての商品にQRコードを設置。来店客がこれを自身のスマホで読み取ると、商品情報がアプリ上に記録され、帰宅後などどこでも再び閲覧できるようにした。1・2号店では基本的に商品に併設したタブレット端末で商品情報を見る方式だったが、アプリ導入で自身の端末で閲覧可能にすることで、商品の公式サイトや、購入サイトへの誘導を容易にしている。
アプリにはアンケート機能も搭載した。回答してスタンプをためると店内で利用可能なクーポンがもらえる特典を用意し、アプリのダウンロードを促す。出品企業はこのアンケート内容をカスタマイズできるため、より需要に沿った消費者データを収集できる。
同じくデータ取得の点では、産業機器メーカーのデンソーウェーブ(愛知県)との協働により、店舗の出入口外側にもカメラを設置。同社の人流データ計測技術を活用して、店舗前半径15m圏内の人の流れを測定し、店内のデータと組み合わせることで、出品企業のマーケティングための新たな提案につなげていきたいという。ベータ・ジャパンの北川卓司CEOは「『どのような人が、どれくらい店の前で立ち止まり、入店したか』といった行動もデータ化し、商品を宣伝するメディアとしての店舗価値も高めていきたい」と語っている。
渋谷店の来店客目標は明確には掲げていないが、北川CEOは「月間1万人以上の来店は見込める」と話す。今後は東京都以外の都市部に出店する計画もすでにあるそうで、リアル店舗の可能性を追求する最先端事例として注目が集まる。
会社概要
店舗名 | b8ta Tokyo-Shibuya |
所在地 | 東京都渋谷区渋谷1-14-11 小林ビル1階 |
売場面積 | 約243㎡(共有部含む) |
営業時間 | 11:00~19:30 |