新聞・TV、世間におもねる
このところ世間の論調を確認してから社説やコメントを打ち出す新聞、TV局が目につく。
2011年12月31日――。
オウム真理教元幹部で逃走中の平田信容疑者が警視庁本部に出頭するもイタズラと一蹴され、門前払いされた。結局、平田容疑者は丸の内署に1人で出頭し、その場で逮捕された、という出来事があった。
新聞、TV局は、当初、この事実を、ただニュースとして報道していた。
しかし、4~5日後から「警察の態度はたるんでおり、けしからん」と一斉に批判をし始める。これを受け、警察庁は1月6日に全国の警察本部に指名手配容疑者の情報を全職員に再度周知させるなどの指示を出している。
平田容疑者のケースは、年末年始の慌ただしい時期だったから、新聞、TV局は警察の怠慢ぶりを即座には非難せず、しばらく置いてからしようとしたのかもしれない――。
と、良く受け止めてあげたいところだが、それ以前にも同じことがあった。
東日本大震災後の「花見自粛」の動きである。被災者の心情をおもんぱかって、「花見」を自粛しようという流れだ。石原慎太郎東京都知事が早い段階で「一杯飲んで歓談する状況ではない」と都民を促したこともあり、世の中が一斉に自粛ムードに傾いた。
この時に、「自粛はいけない」という論旨を力強く主張した新聞やTV局は、ほとんどなかったはずだ。
その後、徐々に、「自粛は経済活動にブレーキをかけ、ひいては被災者、被災地のためにならない」という主張が草の根的にふつふつとわいてきた状況を見て、「自粛はやめよう」という主張を新聞もTV局も取り上げるようになった。
平田容疑者の件、花見自粛の件…。今の新聞社やTV局は、良し悪しの判断を瞬時にしない傾向がある。“後出しじゃんけん”よろしく、社会の趨勢がはっきりした後で、その意見に追従する。
「自社だけが誤っていたら大変だ!」という恐怖感が口を重くし、筆を鈍らせるのだろう。
その結果、石原都知事のように自分の意見を真っ向からは主張しない。
しかし、そういう人たちのことはジャーナリストとは呼べない。“後出しじゃんけん”なら素人でも取材をしなくてもできるからだ。
もちろん、ジャーナリストだって、人間だから間違うだろう。
ただ、間違ったならば、気付いた直後に訂正すればいい。
ところが、間違いを恐れて意見せず、社会評価の趨勢におもねるというのは、まったくいただけない。
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