犬飼育頭数減少の陰にある「2つの高齢化」老犬ホームは日本で定着するか?ペット卸ジャペルの挑戦
敷地面積1094坪!広大なペットケアハウスでできること
現在、老犬・老猫ホーム、ペット介護施設は全国に数十か所しかなく、それもNPO法人などが細々と営んでいるケースがほとんど。こうした施設が普及している欧米と比べると、一般の認知度も極めて低いのが実態だ。
そうした背景から、数年前から、ペットケアハウス事業への参入を企画していたのがジャペルだ。都市部にも比較的近く、近隣に住宅地がない、広い敷地面積を確保できるなど、物件の条件が厳しかったこともあり、施設開業まで時間がかかった格好だ。
今回、あにまるケアハウスを開設したのは、東北自動車道加須インターから近く、人口の集中する大宮・浦和エリアからは車で50分程度の距離にある。
敷地面積は1094坪。犬・猫を最大で150頭預かるキャパシティを持つ。ペットの居住スペースは約30坪の部屋が4部屋あり、トリミングルームや給餌室、宿直室、面会室なども備える。
現在、犬・猫合わせて17頭が暮らすこのケアハウス。最大の特徴は340坪もある広大なドッグランスペースだ。1日2回、90分ずつ、犬をこのドッグランスペースに出して、思い思いに過ごしてもらう。スタッフが毎日散歩をする必要もない。はじめは集団生活に慣れずに戸惑っている犬もいるというが、すぐに慣れて、じゃれあったり、眠ったりしているという。広い敷地を自由に駆け回れるため、施設に来る前よりも元気になった犬もいるそうだ。
現在の犬齢・猫齢は13~15才。人間でいえば後期高齢者にあたる。そのため、外見でわかる白内障などに限らず、健康に何かしらの課題や病を抱えている。そのため、各犬固有のゲージの上には、毎日の健康状態などをチェックする管理表、処方薬、薬の飲ませ方の説明書などが置いてある。獣医師と提携し、定期的なメディカルチェックも行う。
欧米でペットケアハウスが充実している納得の理由
現在、犬・猫の預かり期間は、1か月、半年、1年、終身。団体生活にどうしても慣れない犬もいるので、1週間の様子見期間を設けることも可能だ。
ジャペル常務取締役であにまるケアハウス管掌の川崎豊氏は「飼いたいけれど、年齢的に飼えないと思っておられる高齢者の方は多く、社会課題の一つとして解決するのが当社の使命でもあると考え、この事業に参入した。関東4県をターゲットに、認知度を高め、ペットとともに暮らす社会にいっそう寄与していきたい」と意気込む。
現在ジャペルでは、DCMホールディングスの石黒靖規社長のアドバイスを受け、預けているオーナーが常に自分のペットを見守れるようなITを活用した仕組みや、多くのペットオーナーが気軽に施設を訪れるような工夫を凝らすことで、ケアハウスの認知度を高めていきたい考えだ。同時に、全国のホームセンターを活用して、ケアハウスの利用につなげることも検討中だ。
欧米では、ケアハウスは莫大な寄付の元に成り立っているが、それは多額の寄付金控除が認められているからでもある。志を持つ一部の事業者やNPO法人が細々と行う日本とは環境が大きく異なるのである。ジャペルの参入は、ペットとともに暮らす社会のいっそうの醸成につながると同時に、欧米に倣い、ケアハウスが充実する仕組みを政治主導で整備することも、また大事だと言えるだろう。