ダイエーの経営再建プロセス

2020/05/01 08:34
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    『ダイエーの経営再建プロセス』
    高橋義昭・森山一郎=著
    (中央経済社刊/2800円〈本体価格〉)

    現在はイオン(千葉県/吉田昭夫社長)の完全子会社であるダイエー(東京都/近澤靖英社長)は、かつて売上高3兆円超、グループ企業150社以上を傘下に持ち、総合スーパー(GMS)事業を主体とする日本最大の小売企業だった。そんな同社が単体・連結ともに経常赤字となったのが1997年度。その翌年の98年からイオン傘下に入る2013年までの約16年間、創業者の中内㓛氏など内部経営者のほか、銀行や外部招聘経営者、産業再生機構、投資ファンド、商社、小売企業など多くの関係者が経営再建に取り組んだものの、結局誰もダイエーを“復活”させることはできなかった。本書は、かつて同社に在籍していた2人の社員が、ダイエーの経営再建のプロセスの全体像をあらためて詳しく分析し、再建を阻んだ要因を明示するとともに、小売企業の今後の再建についての示唆を提示することを目的とした労作だ。

    本書の中で、著者はダイエーの経営再建が不調に終わった原因の1つとして、再建主体の度重なる変更に振り回されてきたことを挙げつつ、チェーンストアを展開する小売業の経営再建における特有の課題として、店舗閉鎖の功罪を指摘している。ダイエーの場合、経営再建に取り組んだ16年間のうち、30~50店舗規模の大規模な閉鎖が3度にわたり実施されてきた。本来であれば、営業不振店の閉鎖で短期的には損失が発生するものの、残存店舗の営業を通じて業績改善が可能になるはずだ。しかし、ダイエーでは営業不振店を閉鎖しても新たに業績の悪い店舗が発生していた。

    このようなことが起こる原因として、著者は本部経費の負担問題を指摘している。一般的にチェーンストアでは本部経費を各店舗に按分し、店舗段階の営業利益からその経費を差し引いて店舗利益を算出している。そのため、店舗閉鎖に合わせて本部経費が削減されなければ、残存店舗の本部経費負担率が上昇してしまうのだ。

    構造不況がささやかれて久しいGMS業界。各社は非食品の専門性向上や食品売場の強化など、収益性の向上に注力している。本書を読み、かつてGMSのトップ企業だったダイエーの経営再建の不首尾を教訓にすれば、今後のGMS事業再建に生かすこともできるだろう。

    『ダイヤモンド・チェーンストア』2020年5月1日号掲載)

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