思わず「ブラボー!」、知られざる京都の一面 日本最古の中央卸売市場で楽しむ老舗定食屋の味

2022/12/16 05:55
森本 守人 (サテライトスコープ代表)
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しばらく放心状態のまま天井を眺める

 店内に入ると、5卓あるテーブルはすべて埋まっていた。店員に「1人です」と伝えたところ、相席を促され適当な席に座る。

相席を促され適当な席に座る
壁には「日替わり定食」のほか、「焼魚定食 800円」「うなぎ丼 同」、お造りの「盛合わせ定食 1100円」などの手書きメニューがあった

 壁には「日替わり定食」のほか、「焼魚定食 800円」「うなぎ丼 同」、お造りの「盛合わせ定食 1100円」などの手書きメニューがあった。私は空腹にふさわしい料理はどれかと考え、「中トロ定食 1200円」を注文した。

 料理がくる間、周囲を観察していると全員が男性。作業着姿の市場関係者のほか、スーツに身を包んだサラリーマン、またリュックを抱えた旅行者風の人もいる。

 料理を運んでいるのは、やや落ち着いた年齢の金髪女性。伝票を確認しながら、お盆の上に小鉢を置いたり、戸棚から食器を下ろしたりと忙しそうに働いている。奥の厨房に視線をやると、黙々と調理する年配の男性の姿が見えた。無言の連携のもと、実現している効率的なオペレーションを感じる。

 少しして、運ばれてきた定食がこれである。

運ばれてきた「中トロ定食」

 中トロをアップ。

中トロをアップで

 まずは味噌汁から。割り箸で具を確認した後、椀を持ち上げ、すっと汁を口に含む。うん、薄味で好きな味だ。

味噌汁は薄味で好きな味だった

 いよいよメーンの中トロである。

一番手前にあった中トロ一片を箸で持ち上げる

 一番手前にあった一片を箸で持ち上げる。

 わさびを多めに入れ、事前に攪拌しておいたしょうゆにつけて口に入れる。心の中で思わず「ブラボー!」と叫んだ。間髪入れずご飯を掻き込むと、久しぶりの食事に早くも胃が反応している。たまらず、中トロをもう一片、追加投入した。

 それから大根おろし&釜揚げしらすやたくわんで時々、口をリセットしつつ、思う存分に中トロを楽しんだ。最後は、ちょっとだけ残しておいた味噌汁でフィニッシュする。

時々、大根おろし&釜揚げしらすや、たくわんで口をリセットする

 ごちそうさまでした。しばらく放心状態のまま天井を眺めていた。

 満足な気持ちで店を後にする。競りはとっくに終わっており、活気のある時間帯ではない。だが、あちこちで軽車両や、「ターレットトラック」と言われる小型の乗り物で移動する人の姿があり、あらためて中央市場にいることを感じさせてくれた。

 「京都」駅から、わずか1駅の「梅小路京都西」駅の周辺エリア。ちょっと違った京都を楽しみたい人におすすめしたい。

「京都」駅から、わずか1駅の「梅小路京都西」駅の周辺エリアは、ちょっと違った京都を楽しめる
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記事執筆者

森本 守人 / サテライトスコープ代表

 京都市出身。大手食品メーカーの営業マンとして社会人デビューを果たした後、パン職人、ミュージシャン、会社役員などを経てフリーの文筆家となる。「競争力を生む戦略、組織」をテーマに、流通、製造など、おもにビジネス分野を取材。文筆業以外では政府公認カメラマンとしてゴルバチョフ氏を撮影する。サテライトスコープ代表。「当コーナーは、京都の魅力を体験型レポートで発信します」。

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