アスクル代表取締役社長兼CEO 岩田彰一郎
消費者向けネット通販に本格進出、アマゾンとは違う切り口で対抗する!
オフィス用品通販最大手のアスクル(東京都/岩田彰一郎社長兼CEO〈最高経営責任者〉)が2012年10月、ポータルサイト大手のヤフー(東京都/宮坂学社長)と組んで、日用品など生活消費財を販売するネット通販サイト「LOHACO」(ロハコ)を立ち上げた。競争が激化する消費者向けネット通販市場。アスクルはなぜこの市場に参入し、どのような戦略で成長をめざすのか。岩田社長に聞いた。
聞き手=千田直哉 構成=下田健司(ともにチェーンストアエイジ)
コモディティ市場でどう利益を出すか
──12年10月、ヤフーと組んで、ネット通販サイトのロハコをスタートされました。
岩田 1日1回のPDCA(仮説・実行・検証・改善)サイクルを回していますが、その都度新しい発見や学びがあります。オフィス用品通販の「アスクル」では、カタログを基点としたサービスのため、100%ネットでモノを売るという経験はありません。しかも、カタログは年に2回の発行ですから、6ヵ月に1回のPDCAです。どんなときにお客さまが反応して、どんな見せ方をすれば買っていただけるのか、そんなことが、PDCAを回す中で見えてくるのです。
──具体的にはどんな発見があるのですか。
岩田 テクノロジーのすごいところなのですが、画像や説明文を複数パターン用意し、利用者の反応を調べる「A/Bテスト」では、お客さまの反応を見て、合理的、科学的に判断できます。これはカタログではできません。
また、リアル店舗では、お客さまは売場を回遊しながら商品を購入されます。同じことがネットの中でも起こっています。それも、ネットの“海”のどこからお客さまがやって来るのか、ネット全体の中で今、どういうキーワードで商品を探しているのか、といったことが見えてくるのです。これがウェブの面白さです。ロハコのサイトからほかのサイトに行くケースも当然あります。そういうダイナミックな世界での競争なのです。
──日用品のように、品質や機能に大差がなくなり、コモディティ化した商品は儲からないと言われています。
岩田 われわれは、すでに洗剤や飲料などをかなり扱っていて、大量に購入されるお客さまがいらっしゃることが強みです。
コモディティはレッドオーシャン(競争の激しい市場)で儲からないと言われます。しかし、アスクルのオフィス用品通販も当初は、「中小事業所では購入量が少なく、配送費ばかりかかって儲からない」と言われました。
コモディティは、1品1品は薄利ですから、どのようにして利益を出せるようにするかがポイントです。実は、われわれはB2B(企業間取引)で、コピー用紙を日本でいちばん売っています。コピー用紙を中小事業所に販売しても採算が合う仕組みを構築し、重かったり、かさばったりする商品をお客さまに届けて成長してきました。飲料や洗剤など、単価が安くて儲からないと言われている商品を届けるのは、もともと得意な会社なのです。