災害時連携、電力の復旧加速=能登地震で効果確認―送配電各社
大手送配電など10社が災害時の迅速な電力復旧を目指して作った「災害時連携計画」。今年1月の能登半島地震では、2020年7月に策定された同計画に基づく初の広域応援が行われ、早期復旧への効果が確認されたという。北陸電力送配電の要請を受けて現地入りし、幹事社として他電力との調整役を担った関西電力子会社の関西電力送配電の担当者らに話を聞いた。
連携計画は、19年に相次いだ大型台風による停電の際、電力会社ごとに工法や工具が異なっていたために応援作業が滞ったことから策定が義務化。復旧方法や工具の共通化、作業工程のマニュアル作成など応援事業者による円滑な作業手続きが整えられ、「今回の能登地震の復旧作業で活用できた」(関電送配電広報)と話す。
「被災者の方に少しでも安心を届けたかった」。発生翌日の1月2日に現地入りした石川祐二さん(54)はこう振り返る。関電送配電は延べ391人を派遣。石川さんは現地で指揮を執り、東京電力パワーグリッドや四国電力送配電などとの連絡窓口となり応援要員の調整を行った。
被災地へは遠距離の沖縄を除く8電力グループが4000人を超える応援部隊を派遣。1カ月で停電地域の9割以上を復旧させた。
連携計画に基づき、平時から送配電事業者間で定期的に意見交換や訓練をしていたことで現地でのスムーズな作業が実現。作業長の岩本直俊さん(38)は「社によって設備が異なる部分に最初は困難を感じたが、計画にある仮復旧マニュアルで断線修理などの知識が事前に入っていたので、安全で効果的に復旧できたと感じている」と話した。
石川さんは今後の課題として「衛生面や寒さなどの対策の充実」を挙げる。真冬の北陸で起きた今回の震災では、ホテルを確保できても停電や断水で暖房やトイレが十分に使えず、作業以外の部分で現場作業員に困難が発生したという。
8月上旬、日向灘を震源とする最大震度6弱の地震発生を受け、気象庁が初めて「南海トラフ地震臨時情報」を発表するなど、大規模災害への警戒の必要性は高まっている。大規模停電からの復旧の迅速化は喫緊の課題で、広域の被害を想定した連携計画のさらなる強化も求められる。