日本政府観光局が18日発表した9月の訪日外国人数(推計値)は、前年同月比10.6倍の218万4300人だった。コロナ禍の影響を受けていない2019年同月の96.1%まで回復し、前月(85.6%)からさらに上昇。円安による割安感も追い風に回復が進み、コロナ前水準が目前に迫っている。
また、観光庁が同日発表した7~9月期の訪日外国人旅行消費額(速報値)は19年同期比17.7%増の1兆3904億円。四半期ベースで初めてコロナ前を上回った。1~9月の累計額は約3.6兆円と、年間の過去最高額だった19年の約4.8兆円に匹敵するペースで、政府が早期達成を目標に掲げる年5兆円も「視野に入る勢い」(国土交通省)となっている。
円安や物価高に加え、平均宿泊数が伸びたことで7~9月期の1人当たりの支出額は約21万円とコロナ前から3割程度増えた。
9月の国・地域別の訪日客は、韓国が57万400人と最多で、台湾(38万5300人)、中国(香港・マカオを除く、32万5600人)、米国(15万6600人)、香港(15万1100人)と続いた。
コロナ前に全体の約3割を占めた中国は、訪日団体旅行が8月に解禁されたことも背景に回復基調が強まってきたが、19年9月比では6割減にとどまっている。高橋一郎観光庁長官は18日の記者会見で、東京電力福島第1原発の処理水放出の影響は「現時点では限定的だ」と指摘。中国人客復活には「両国間の航空便の復便が非常に重要」との考えを示した。
訪日客が急増する中、課題も浮き彫りになっている。京都市など一部の観光地では、住民生活や環境に悪影響をもたらすオーバーツーリズム(観光公害)が顕在化。地方では宿泊施設やタクシー、バス運転手などの人手不足も深刻化している。