事業急拡大組も仕切り直し組も ネットスーパー、顧客争奪戦の勝者は?

小野 貴之 (ダイヤモンド・チェーンストアオンライン 副編集長)

若年層の利用意欲低下、市場に漂う停滞感

 体制がおおむね整い、各社の取り組みが本格始動したかたちだが、足元では気になる兆候が見られている。

 本特集恒例の消費者調査によると、生活必需品の購入先としてネットスーパーを利用する割合は21.0%と前年から2.0ポイント(pt)減少した。

 また、利用者のうち、「(現在メーンで使っている)ネットスーパーを今後も使い続けたいか」という設問に「はい」と回答した人は全体の78.4%だった。高い水準ではあるものの、前回調査と比較すると、「はい」の割合は3.9pt減少。年代別にみると、30 代が9.6pt減、20代が5.8pt減と、とくに若年層で利用意欲低下の傾向がみられている。

 背景にあるのは、昨今続く物価高、それに伴う節約志向の高まりだ。食品通販市場に関するレポートを発表している矢野経済研究所も、実店舗への需要流出などの理由から成長鈍化を予測しており、この先、ネットスーパー市場が一気に拡大していくという可能性は低そうだ。

 急拡大が終わり、停滞感がうっすらと漂い始めたネットスーパー市場。この影響を受けそうなのが、初期投資が重く、売上を大きく確保して高い固定費分を賄うセンター出荷型のネットスーパーだ。

 センター出荷型は注文件数を増やしてセンターの稼働率を上げ、黒字化をめざすモデルであるのは周知のとおり。既存顧客のリピート率向上はもちろん、「ネットスーパーをまだ利用していない層」を開拓して取り込んでいく必要があり、そのためにはGreen Beansのようなきわめて積極的なマーケティング投資が求められる。

 新規顧客を次々と獲得し、「飛躍的な成長を毎年継続的に実現できるか」が成否を分けることになりそうだ。

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記事執筆者

小野 貴之 / ダイヤモンド・チェーンストアオンライン 副編集長

静岡県榛原郡吉田町出身。インターネット広告の営業、建設・土木系の業界紙記者などを経て、2016年1月にダイヤモンド・リテイルメディア(旧ダイヤモンド・フリードマン社)入社。「ダイヤモンド・チェーンストア」編集部に所属し、小売企業全般を取材。とくに興味がある分野は、EC、ネットスーパー、M&A、決算分析、ペイメント、SDGsなど。趣味は飲酒とSF小説、カメラ

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